跡見学園の「英語コミュニケーションスキル入試」は、 世界中の人と心を交わし、協働する道に繋がっている

英語コミュニケーションスキル入試

「自らの美意識のもとに新たな価値を生み出し、周りを幸せにする女性」。跡見学園が育成を目指す生徒像です。1875年創立。日本人が設立した最古の女子教育機関であり、「ごきげんよう」の挨拶を学校で初めて用いたのも、私立学校で制服を初めて作ったのも同校です。本物に数多く触れ、五感を磨いて豊かな心を育み、目と手と心を働かせ、「思う」から「考える」ことのできる理知的な人を育てる。そして、生徒たちは次代を見据えた教育のなかで「しなやかで凜とした女性」への階段を上っていくのですが、その資質を発掘するために同校が実施する入試の一つが「英語コミュニケーションスキル入試」(以下、英語CS入試)です。英語科主任の樋口真希子先生と、中2のH・Kさん、中3のK・Nさんにお話を伺いました。

■コミュニケーションスキル獲得のためには、意欲と姿勢が大切

樋口真希子 先生
※撮影時のみマスクを外していただきました。

「英語CS入試」について、 御校は「こちらも応援してしまう楽しい試験」とおっしゃっていますが、 試験はどのような感じで行われるのでしょうか。

「本校の教育方針の一つに『コミュニケーション能力の向上をめざす』ことがありますが、コミュニケーションは、人間が生きていく基本となるものです。ですから、英検3級程度の力は必要ですが、今の段階では高い英語力というよりも、間違えても伝えたいという意欲や姿勢を大切にしています。面接では、受験生の緊張をほぐすような質問をしますので、英語のスキル以上にコミュニケーションのスキルを見たいですね」

ここで、まず「英語CS入試」の概要をお伝えしておきましょう。

■「英語CS入試」の内容と流れ

●求める「知識・能力・態度」(英検3級程度)
①英語に関する初歩的な一般知識
②音と文字を一致させる能力
③ごく基本的な英文を書く能力
④積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度

●試験内容
①基礎学力を見るための漢字力と計算力の試験(30分/50点)
②英語の筆記試験(20分/50点)
③英語の面接(7分程度/100点)
→・カードに書かれた英文を音読し、その内容に関する面接官の質問に答える
 ・受験生自身の身近な事柄に関する面接官の質問に答える……など

※「英語コミュニケーションスキル入試」の面接サンプル動画はこちら

2023年で6回目を迎えた「英語CS入試」ですが、 受験生に、何か変化を感じられることはありますか。

「本校の中学生を見ても思うのですが、昔と違うのは、みんな臆せずにものを言えるといいますか、プレゼンにとても慣れている印象を受けます。小学校でも発表の機会が多くなっているからかもしれません。あと、英語CS入試で入学した生徒は、英語の取り出し授業を受けることができるのですが、そこでは教科書を学ぶというよりも、生徒主体でプレゼン的な授業を数多く行いますので、取り出し授業に魅かれる受験生もいるようですね」

これまで『国語の跡見』と言われてきましたが、それを堅持しつつも、 英語教育もとても充実しています。 実際には、どのような学びが展開されているのでしょうか。

「将来、どんなことに出会うかわかりませんので、その時にアプローチしやすいように、まずは基礎力をしっかりと身につけさせることを第一に考えています。また、文法の理解なくして英語の文章を読んだり正しく書くことはできません。自分の意見を英語でまとめて、発表できることを目標に、基礎的な力を段階的に身につけていきます。昨年度の中1からは、正課として週に1回、オンライン英会話もスタートさせましたし、英会話力をさらに伸ばす放課後プログラムなどもあります。もちろん、英語が苦手な生徒もいますが、何を勉強すればいいのかと聞かれた時は、『カキクケコ』ですよと伝えています」

■英語力を向上させる秘訣

●「カキクケコ」
「カ」=書く   「キ」=聞く    「ク」=繰り返す
「ケ」=継続する 「コ」=声に出す

「単語をたくさん覚えるとか読解する以前に、単語一つ、フレーズ一つごとに『カキクケコ』を根気よく繰り返すことで自分のものになっていきます」(樋口先生)

●「インプット→インテイク→アウトプット」
「インプットしたものを、音読などを通して自分の中に刷り込み(インテイク)、アウトプットする力をつける。これを繰り返すことで、英語力は必ず伸びます」(樋口先生)

この「英語CS入試」で入学された方も含めて、 卒業生には、英語を生かして理系に進まれた方も少なくありませんね。 そこに、「跡見流リベラルアーツ」が具現化されているように思います。

「そうですね。理系を志望する生徒はそれほど多くはありませんが、自分で何かを見つけ、志を持って進んでいく生徒は多いですね。外科医を目指す卒業生はチェコの大学の医学部に進学し、英語とチェコ語を話していますし、いったん日本の大学に入学したものの、その後ロンドン大学に入学し直して数学を学んでいる卒業生もいます」

英語を学ぶ意義の最大のポイントは、可能性を広げることですね。

「宝塚歌劇団に入った卒業生は、『もっと英語をやっておくんだった』と言っていました。『ベルサイユの薔薇』などフランスものを演じる時、フランス語では無理でも、英語で文献を読むことができるからと。数学や歴史も同様で、英語はあらゆるトピックに通じますから、原文で読むことで世界も広がります」

では、最後に受験生へのアドバイスをお願いします。

「日本語でも英語でも、自分の思いや意見を言えることは、自立した女性へと繋がっていきますし、英語を学ぶことで世界が大きく変わります。習い事として英会話を頑張ってきた受験生はもちろんですが、ハードルは決して高いわけではありませんので、小学校で英語に興味を持った、もっと会話をしてみたいという受験生もお待ちしています。そして、本校の6年間で、人と関わるなかで自分の意志を持って物事と向き合い、自分の意見をきちんと伝えられる人になってほしいと願っています」

左からH・Kさん(中2)とK・Nさん(中3)
※撮影時のみマスクを外していただきました。

■「ぼんやりした英語」が、跡見で「しっかりした英語」に

H・Kさん(中2)に聞きました

中学受験をしたのは、跡見学園の「英語CS入試」だけだった というH・Kさんですが、 受験しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

H・Kさん「祖母が跡見学園の出身なのですが、小3の時に私立をいくつか回って、跡見の文化祭も見たんです。まだ中学受験をすることは考えていませんでしたが、その時、『雰囲気がいいなあ』と。小4で学校見学にも来て、また『いいなあ』と。そして、小4の時に英語CS入試が新設されて問題を見てみたら『いけそうだな』と思ったんです。本格的に受験を考え始め、小6の夏休みくらいから過去問に取り組みました。あと、和室やガラス張りの温水プールなど、設備にも惹かれたので(笑)」

「いけそうだ」ということは、英語に自信があったのですね。

H・Kさん「2歳の時から4年制のインターナショナルスクールに通い、小学校からは英語教室に入って、英会話のオンラインレッスンも受けていました」

では、受験準備はほとんどしなくても大丈夫だったのですか。

H・Kさん「いえ。英語に関しては、面接動画を見て感じをつかんでいたので大丈夫だと思いましたが、私は塾に通っていなかったので、国語と算数に関しては、一般入試も含めて過去問をたくさん解きました」

入学されて、跡見学園での英語の授業はどのような感じですか。

H・Kさん「私は取り出し授業を受けているのですが、本場の方と同じような速さや発音で話したりするので楽しいですね。取り出し授業は少人数だし、細かいところまでしっかりと見てくださるので、『ぼんやりした英語』が『しっかりした英語』になったと感じています。中学受験が終わった、小6の春休みに英検準2級を取ったので、中1のうちに2級を取ることを目指しています」

跡見学園での学校生活はどのような感じですか。

H・Kさん「女子だけだからリラックスして気楽におしゃべりができるし、授業では『教え合う』時間があって、友達は何が得意なのかがわかったりして、とても楽しいですね。部活の先輩もフレンドリーだし、みんなとても仲が良いです」

部活動は、何をされているのですか。

H・Kさん「剣道部です。仮入部期間中に覗いてみたら、先輩が優しくて、雰囲気がとても良かったので入りました。活動は週に3日で、そろそろ袴をつける予定なので楽しみです。じつは、父と弟も剣道をやっているので、共通の話題が増えました(笑)」

将来の夢、目標はありますか。

H・Kさん「小さい頃から本が大好きで、小学校の時は夏休みには100冊くらい読んでいました。今は、土日にまとめて読んでいます。だから、本と英語の両方に関わる仕事に就ければと思っています。例えば、司書とか」

では最後に、この入試はどのような人に向いていると思いますか。 先輩として、受験生にメッセージをください。

H・Kさん「入学前に英語を勉強してはいましたが、私自身、跡見学園に入って実力が上がったなと思っているので、将来、英語を生かしたい人には良いと思います。今、それほどやっていなくても、英語が得意になりたい人、話すことが楽しいと思える人には向いていると思います」

■学べば学ぶほど世界と繋がれる。英語に興味がある人は、ぜひ挑戦して!

K・Nさん(中3)に聞きました

最初に、跡見学園の「英語CS入試」を 受験しようと思われたきっかけを教えてください。

K・Nさん「もともと英語が好きだったことがあります。私は5歳から小2までアメリカに滞在していたので、帰国生入試を受けたかったのですが、帰国後3年以内という条件を満たしていなかったので、他に英語を生かせる入試ということで英語CS入試を受けました」

帰国後も英語を習われていたんですね。

K・Nさん「2つの英会話教室に通っていました。1つはネイティブの方と一対一で会話やライティングを学ぶところで、もう1つは帰国生だけが通える外国人の先生と会話する教室です。こちらは、今も続けています。跡見では英語の取り出し授業を受けていますが、外国人の先生と話すことが大好きなので、もっと話したいと思って」

外国人の方と話す楽しさというのは、どんなところですか。

K・Nさん「日本人の先生に学ぶ良さはもちろんありますが、同じ英語でも、英語はいろいろな国で話されている言葉ですから、その先生の出身国によって発音やイントネーションが違うところがおもしろいですね」

今のお話を伺って、K・Nさんは 「音」に興味をお持ちなんじゃないかと思いました。

K・Nさん「そうなんです。『英語+音楽』の組み合わせがすごく好きです。小4の時に初めて、英語でミュージカルを教わるワークショップに参加したのですが、衝撃が走って、すごく感動したんです。音楽を通じて何事もやりきろうというワークショップだったので、自分自身の力を発揮できる場として、とても楽しくて。音楽が得意なわけではなかったのですが、ワークショップのスタッフさんが『挑戦してごらん』と言ってくださったおかげで、『楽しんだもん勝ち』を実感させられました(笑)」

部活動は何をしているのですか。

K・Nさん「体操部です。体を動かすことが好きで、アメリカにいた時に体操教室に通っていました。その流れで帰国後も教室に入って、中学でもやりたいと思っていたのですが、公立では体操部がある学校があまり多くなく、体操部があるという点でも跡見学園に惹かれました」

跡見学園での学校生活はいかがですか。

K・Nさん「最初、伝統的なあいさつの『ごきげんよう』がかしこまって硬い感じがして、私に合うかなと不安だったのですが、入学したら明るくて、賑やかで、とても楽しいです(笑)。それに、『ごきげんよう』に込められた意味を知って、その言葉も好きになりました。部活でも先輩がフレンドリーで、昼休みに私の教室に来て話してくださったり、アットホームな感じです。これは、全体の雰囲気として自然に受け継がれているものだと思います」

英語と音楽が好きというK・Nさんですが、将来の夢は何ですか。

K・Nさん「やっぱり、英語と音楽に関わる、人を笑顔にできる仕事に就きたいと思っています。笑顔が一番大事なので。私が参加したミュージカルのワークショップのスタッフさんには、いろいろな国籍の方がいらっしゃって、たくさんの国を巡っているんです。ワークショップでは、日本のキャストの方が通訳してくださったんですが、いろいろな方々の思いをのせて伝える通訳は、すごく素敵なお仕事だなと思います」

では最後に、この入試はどのような人に向いていると思いますか。 先輩として、受験生にメッセージをください。

K・Nさん「跡見学園には英語の力を発揮できる機会がたくさんあるので、たとえ今、英語が苦手でも楽しんで学べる学校だと思います。英語はさまざまな国で話されている言葉なので、英語を学べば学ぶほど、他の国と間接的にでも繋がっている感じがして、そこが魅力です。ですから、英語に少しでも興味があったら、ぜひ挑戦してみてください」

取材Memo

寛容と思いやりの心を持つ「しなやかで凜とした女性」を育てる学校
受験相談の際、「うちの子は引っ込み思案なのですが、大丈夫でしょうか。友達はできるでしょうか」と、保護者の方から聞かれることがあるそうです。その時、樋口先生は「大丈夫ですよ。小学生のうちは成長に個人差がありますが、6年間の中で必ず成長されますよ」と答えるのだとか。同校には、校歌の歌詞にも出てくる「あね・いもと」の校風があります。寄宿舎があった時代からの伝統で、年上の生徒が年下の生徒の面倒をみるのです。生徒さんお二人も「先輩がとてもフレンドリー」と口を揃えましたが、このように、寛容と思いやりの心を育みながら、生徒たちは自律し自立することを目指していくのです。そして、生徒さんお二人がいろいろな話を丁寧にしてくださる様子に、「しなやかで凜とした女性」の片鱗を見たように思いました。このように、すべての学びを支えるのは、同校の伝統である「人間教育」であることも改めて確認できた気がします。



「本物に触れる教育」では一流の芸術や圧倒的な自然に触れたり、
各種研究所を訪問したりするなど、多彩な校外授業も実施。
上は「能・狂言」の鑑賞。同校には謡曲仕舞同好会もある