その種類の多さから新タイプ入試といえば宝仙といわれるほど、現在、宝仙学園理数インターでは、新タイプ入試7種類(2021年度は8種類)全部で11種類もの多様な入試を実施しており、名実ともに「日本一入試方法が多い学校」です。 また「偏差値より学習歴!」「答えのない学びをしよう」「自己肯定感」「指導から支援へ」」「挑戦なくして成長なし」「挑戦、大歓迎!失敗、大歓迎!」「当事者意識」「自己ベストの更新」「知的で開放的な広場」と、学校が発信するメッセージも多彩です。

多彩なメッセージと多様な入試方法は、どうつながっているのか、「学校にないことは入試にしない」がコンセプトの宝仙学園理数インター 教頭 入試広報部長 中野 望先生にお聞きしました。
「新タイプ入試は、公立学校が適性検査試験をはじめた際、これは思考力をテーマのいい問題づくりをしていると思い、採り入れました。その後、リベラルアーツ型やAAA型(Athlete・Artist・Academicの各分野で全国レベルの実績を持つ者)や読書プレゼン型などを設置してきましたが、本校が新しい入試を設置するのは、問題が面白かどうか、そして入学してきた子が面白いかどうかです」

学校で面白いかどうかという基準はめずらしいと思いますが試験の判定もそうなのでしょうか?
「判定はあえて基準を設けずに試験官の討議による“ことば”で決めています。基本はこの子を入れたいかどうかです。ですから試験のとき、敬語が使えるかや服装などは判定には全く影響しません。暗記力を知りたいわけではないのでカンペを持ち込むのも構いません。この子は何か面白い、入学したらこの子はどんなことをやるのだろう、それが見たい、が判定の基本となっています」

もう少し判定のポイントを教えていただけますでしょうか?
「例えばプレゼンでは、こんな実験をしました!ときれいにまとめられたプレゼンをしても、なぜその実験をしたかを尋ねた時に『?』となってしては、自分のものになっておらず、やらされていることがわかってしまいます。逆に無茶苦茶なプレゼンでも、質疑応答がきちっとできると、自分のこととして理解できている、自分の意見を持っているという評価となります。私たちは、どんな動機で何を学び、どう成長したのかを知りたいのです」

「適性検査」では都内でも1、2位を争う受験人数がいらっしゃいますが、その他の新タイプ入試で入学した生徒と差がつきませんか?
「公立併願で勉強をしてきた子と受験勉強をしてこなかった子では知識量という面では、確かに最初は差がつきます。ですが本校は、中学期のテーマは、明るく楽しく一生懸命です。段階的に中1は『はじめからトップギアに入れない(まず居場所と居心地をつくる)』、中2は『なぐさめ はげまし きたえる(失敗しても、やり直せばいい)』、中3は『リーダーシップを発揮する(後輩たちを、なぐさめ、はげます番になる!)』というテーマで成長していってくれればいいのです。次の目標となる大学受験に向けてのスイッチが入るタイミングは本人次第。中学では成績が今ひとつだった生徒も、高校でスイッチが入り、塾にも行かず医学部に入った生徒もいます」
これまでの“教育” のイメージが、正しいことを重んじる四角四面なものだとすれば、中野先生から聞いた、宝仙学園理数インターのイメージは、形が常に変化しながら前に進むカラフルな生命体のイメージ。2021年度には、さらに調べ学習の要素を入れた「オピニオン入試」を導入し、今後は英語入試も新しくしていくといいます。面白いや好きという気持ちを大切に、入試の種類だけでなく大学合格実績も伸ばしている、宝仙学園理数インターの進化には、これまでもこれからも目を離せません。

先生と生徒の距離がちょうどいい
英語AL(advanced learner)入試以外にも帰国生入試や世界スカウト入試(2021年はコロナ禍によりオンライン入試)を行なっている宝仙理数インターの生徒が、シンガライフ社の「帰国子女チャンネル」の取材を受けました。生徒のインタビューはお昼休みの後半30分で一回撮り。質問に対して言い澱むこともなく、しっかり自分の意見が答えられるのが宝仙学園中学校理数インター生。インタビュー中、「先生と生徒の距離感がちょうどいい」というコメントがありますが、これは当サイトが他の生徒を取材したときにも耳にする話。ちょうどいい距離というのは、きっとスープの冷めないおいしい距離感なのでしょう。
教えて!学校のこと 試験のこと
せっかくなので「自己アピール入試」以外の新タイプ入試を受験した生徒のみなさんにも聞きしました。

「理数インター入試」を受験したM.Oさん
「受験を考えたのは6年生に入ってからです。合同説明会で石黒先生と友達みたいに話せて、学校もこんな風に楽しいのかなと思いました。体感授業にも何度か参加して、厳しすぎないし自由すぎない学校という印象を持ちました。理数インター入試を選んだのは、勉強のことより自分の意見を他の人に伝える試験だったので挑戦してみました。試験はほとんど授業みたいな感じで、お題が出されてそれをグループに別れて自分の意見を出し合い、それを大きな紙に書いて発表するというものでした。試験なのにとても楽しかったです。受験される方は、緊張せず自分の殻を破って自分の意見をしっかり伝えれば大丈夫ですよ!」

「AAA(トリプルエー・世界標準)入試」を受験したK.Aさん
「宝仙学園のことは近所なので昔から知っていました。6年生の時にAAA入試のことを知り、和独楽の自己ピーアールで受けました。和独楽は小学校1年生の時、学校で昔遊びをやろうという時間があり、そこで和独楽を初めてやったのですが、その時はぜんぜん上手くできず、悔しかったので、そこから一生懸命練習をしました。試験では和独楽の技を見せましたが、ずっと取り組んでいるのは長回しで、今では10分以上回すことができます。将来は独楽の楽しさを広めることができたらいいなと思っています」

「読書プレゼン入試」を受験したH.Kさん
「4年生頃から受験を考えていて、友達と話している時に宝仙の話がでて印象に残っていたのと、お母さんの職場の上司が『学校生活がすごく楽しそうな学校』とすすめてくれたので学校説明会に参加しました。読書プレゼンは『みかづき』という本でしました。この本は、自分の境遇と似ている話で、画用紙に思ったことをまとめて発表しました。家では練習しましたが、人前でプレゼンするのは初めての経験でした。読書プレゼンは、自分が好きなことを知ってくれ、それを認めてくれるのが良かったです。他にはこんな試験はありませんので、本が好きな人は、自分を恥ずかしがらずに、自分をさらけだして挑戦するといいと思います」

「リベラルアーツ入試」を受験したH.Aさん
「塾は3年生の後半から行っていましたが、趣味をさらけだして受験ができるならいいなと思って受験しました。趣味はアリの飼育で、アリのコロニーを観察してアリの社会性を研究しています。今は5種類のアリがいて1コロニーに100匹位のアリがいます。リベラルアーツの試験では先生にもアリのことを共有してもらえるように説明しました。入学して思うのは宿題がちょっと多いことです。将来は生物学者になりたいと思っていますが、勉強は好きではありませんので」

「AL(アドバンスドラーニング・英語)入試」を受験したK.Yさん
「2科や4科での受験を考えていて、いろいろな学校の説明会に行きましたが一番印象に残ったのが宝仙でした。特に校長先生の話は面白くってお母さんも気に入ったみたいでした。小学1年から4年の2学期まで香港にいたのでAL入試で受験しました。AL入試は、英語の試験なのに日本語リスニングの試験があったのが『何で?』と思いました。入学して友達の話や授業が面白かった話やダンス部の話を親にすると、あなたにあってる学校で良かったねっていわれます」

「グローバル入試」を受験したY.Tさん
「説明会に行ったら、前から知り合いだったんじゃないかと思うくらい、とてもフレンドリーで温かみがあって、いいなと。あと私は将来、コミュニケーションの仕事がしたいので、説明会で生徒さんたちが練習もなく話している姿もいいなと思いました。試験では、自分の経歴や夢をプレゼンテーションしました。試験官の先生からは、どうして宝仙に入りたいか、引越しが多かったので、その時の気持ちなどを聞かれました。日本語もできないとダメみたいで、日本人の先生の日本語の質問には、日本語で答えました。試験を受ける方へのアドバイスは、胸を張ってニコニコすること。私もいい笑顔だねって褒められましたから」
- 取材Memo
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成長するのは失敗をした時。その時、もう1回やろうね。
宝仙学園理数インターでは「生徒への質問コーナー」など、学校説明会を手伝ってもらう生徒は、自主的に手を上げてくれた生徒にぶっつけ本番で登場してもらうといいます。それは本当のことが伝わるということよりも、保護者が集まる会場は、失敗しても許される最高のステージ。どんどん人前で話す経験を与えたいからだといいます。子どもは未熟だから失敗するのは当然で、大切なのはその時、「ほらいったじゃないか」ではなく、もう1回やろうねと応援すること。成長するのは失敗をした時と、ビジネスの世界でもよく耳にする話をお聞きしました。しっかりとした生徒が流暢に話し、完璧な資料が配られる説明会がいいのか。それともぶっつけ本番の生徒が出てきて、情報も少なめの説明会がいいのか。説明会に学校の考え方は現れるものなので、まずは学校説明会へ。そして好きかきらいか、学校との相性を感じることをおすすめします。