小田急線相模大野駅から徒歩10分。相模女子大学中学部・高等部は、緑豊かな広大なキャンパスに幼稚部から大学院を擁する総合学園の中学部・高等部です。1900年創設の日本女学校を礎に、1946年に現在地に移転してきた相模女子の校章の花はマーガレット。マーガレットの花ことばである「希望に満ちた乙女心」を、いつも胸に飾り大切に育てるという思いが込められています。
建学の精神は、「高潔善美~固き心を以てやさしき行いをせよ~」。女子はただ学術技芸に長けるのではなく、高尚なる心術、堅固なる徳操を養成すべきという創立者のことばの通り、相模女子では、学業だけではなく、茶道、平和学習、食育講座、農業体験など、様々な体験を積み重ねることで持続可能で平和な社会に寄与する女性の育成に取り組んでいます。

非認知能力を発掘するための新型入試「プログラミング」
そんな教育を重んじる相模女子が、なぜ入試にプログラミングを取り入れたのか、副校長 入試広報担当の中間先生にお聞きしました。

※写真撮影時のみマスクを外していただきました。
「2020年度の小学校学習指導要領改訂に先駆け、2017年度から相模女子大学小学部で導入された世界的に取り組まれているSTEM教育をロボット教材で実践するプログラミング教育を、中学部でも授業として導入しました。新しい取り組みではありましたが、この授業の中では失敗を繰り返し試行錯誤する姿や、正解がひとつではないことから生まれる自由な発想が、教科の学習と比べ、より顕著に現れると感じました。問題発見やその解決、答えのない課題に取り組むことで生まれる想像力や創造力、やり抜く力などは、「非認知能力」と呼ばれ、相模女子の教育活動の中で特に大切にされている力です。プログラミングでこれらの能力を見ることができるならばと、2019年度の入試から取り入れることにしました。十分な受験準備ができていることと、非認知能力を備えていることは必ずしも一致はしません。そこで、非認知能力にスポットをあてた入試があっても良いと考えたのです」
実際の試験はどのように行われるのでしょうか?
「初めに20分程度、『この命令でこう動く』といったプログラミングに必要な知識についての授業が行われます。その後、課題が発表され、授業で教わった知識を使って、課題を達成するためのプログラミングを行っていきます。この活動が80分程度です。当然この時間は、試験会場の先生たちは助けてくれません。受験生は80分間ひたすら試行錯誤を続けます。 このあとは、各自のプログラミング内容を発表し討議するグループディスカッションと、基礎計算力テストを行い終了になります。どちらも20分程度です」

採点はどのように行われるのでしょうか?
「受験生1人を複数の試験官が見ています。課題に対する着眼点、コマンドの使い方やその使用方法、効率的なプログラムを組めているかなど、観点は多岐にわたります。その中で何より大切なのは、最後まであきらめずに取り組めているかという姿勢になりますね。失敗してもやり直せばよく、答えのないことを考え続けることが大事なのです。基本的に減点法ではなく、いいところを見つけて加点していきます。また、課題をクリアすることに着目されがちですが、『時間内に課題をクリアできない=不合格』ではありません。先にあげた観点の積み重ねを総合的に判断し、合否の判定が行われます。 これまでの入試では、こちらが想定していたよりも効率的なアプローチで課題を達成した受験生もいました。答えがないからこそ、先生方が最も効率的な答えを知っているわけではないのです (笑)」

「プログラミング入試」で入学した生徒は勉強についていけてますか?
「塾に通って2科4科受験をした生徒は、積み上げてきた知識があるので、はじめのうちはアドバンテージがあるかもしれません。ただ、どんな形で入学しても、最も大切なのはそこからの生活です。相模女子ではいろいろなタイプの入試があり、いろいろな方法で入学してきた生徒がいます。だからこそ、すべての生徒が学習に前向きになるための仕掛けをたくさん準備しています。プログラミング入試で大切にしている『あきらめずに取り組むこと』に自信をもって取り組めば、学習で遅れてしまうといったことはありません。実際に、プログラミング入試で入学した生徒が定期試験総合得点1位をとったこともあります」

最後に受験生にメッセージを
「私立学校選びは、みなさんの「6年間の過ごし方」選びです。学校の魅力は、入学試験から高校を卒業するまでの間にたくさんが詰まっています。それぞれの学校の魅力を少しでも多く知ったうえで、行きたいと思える学校を見つけて欲しいと思います。第一志望がたくさん見つかるくらいになれるといいですね。 相模女子は、答えのない見えない未来を生きる生徒たちにとって、どのような力が必要かを考え、新しい取り組みにチャレンジする学校です。教わる学びから、見つける学びへ。相模女子は今もなお進化し続けています。気になったら、まず一度、学校を訪れてみてください」

プログラミング入試で入学した生徒に聞くと、「楽しかったから何度でも受験したい!」という言葉も聞かれました。相模女子では、「プログラミング」を実際に体験できる説明会も実施していますので、まずは説明会に行ってみましょう。

園児から大学生が一つのキャンパスで学ぶ「ワンキャンパス」だからできること
預かり保育のお手伝いや、管理栄養学科の大学生から学ぶ和食のいろは、大学の講義を体験する高大連携講座など、幼稚部(認定こども園)から大学院までが一つのキャンパス内にある相模女子では、総合学園としてのメリットを生かした多彩な学園プログラムが推進されています。プログラミングの授業も、プログラミング教育の第一人者である小学部校長をコーディネーターとして迎え実現しています。相模女子のキャンパスには、近くにいるからできること、隣人だからできる交流が溢れています。
教えて!学校のこと 試験のこと
「プログラミング入試」で入学した生徒さんがアンケートに答えてくれました。ぜひ参考になさってください。(回答抜粋)
Q1 中学受験を考えはじめたのは何年生頃で何かきっかけがありましたか?
・小学6年生の頃、兄も中学受験していて、親からも勧められたので。
・小学6年生の秋頃です。バスケが強い学校に行こうと思いました。
・小学4年生です。友達が中学受験をするといったので。
・小学4年生の頃。体操部がある学校に行きたかったため。
・小学6年生の1月。公立の学校には行きたくなかった。
Q2 「プログラミング入試」をどこで知りましたか?
・プログラミング入試を紹介していたサイトで。
・学校の説明会で。
・受験を考えていた友達から。
・プログラミング体験会に参加して。
・学校見学に行った時です。
Q3 「プログラミング入試」を受験するための準備をしましたか?
・学校の体験会に参加しました。(複数)
・特にしていません。
・算数の計算問題を解きました。

Q4 なぜ「プログラミング入試」を選んだのですか?
・中学受験を考えたのが遅く、入試対策をしていなかったからです。
・国数理社の4教科より得意だったから。
・体験会に参加して、とても楽しかったから。(複数)
・説明会の話を聞いて自分に向いていると感じたからです。
・入試でプログラミングがあるのは珍しいので受けたいと思いました。
・意欲を見て欲しかった。
・ロボットをプログラミングするのは楽しいから。
・勉強が苦手でもチャンスがある。
Q5 「プログラミング入試」を受けてどうでしたか?
・自分一人で試行錯誤してプログラムが作れるところがいいです。
・失敗しながら「どうしたら成功するのか」と考えながらやるのが楽しいです。
・正解がないから自分の考え方で進められますが、逆に正解がないから対策がしにくい。
・紙に書いて答える試験と違って、何回も挑戦できるのがいいです。
・「こうしたら、こうなるだろう」と考えることに楽しさを感じました。
・タブレットを操作するのが初めてだったので楽しかったです。
・考えた結果「できる」ことに、やりがいを感じました。
・自分で考えたことをロボットが読み取り、動いてくれるのが面白かったです。
・みんなの前で自分の力で発表できたとき、達成感があってよかったです。
・ロボットを動かす机が2人で1つだったので動かす時間がもっと欲しかったです。
Q6 入学してみてどうですか?
・プログラミングの授業が本格的にできるのがいいです。
・女子しかいないのが楽でいいです。
・英会話の授業が1クラスを分けて少人数で学習できるのがいいです。
・部活のチームメイトもクラスメイトもみな明るくて学校が楽しいです。
・部活も授業も楽しい!
・一人ひとりの個性を重視した、のびのびと学校生活が送れる良い学校だと思います。
・プログラミングの授業が楽しいです。
・パソコンを使った授業が楽しい!
Q7 将来の夢はなんですか?
・臨床心理士です。
・獣医師かパン屋さん
・CA(キャビンアテンダント)
・会計士か銀行員
・人の役に立つ仕事
・プロバスケットボール選手
・クリエイティブな仕事
・助産師か看護師
・スポーツに関係した仕事
・英語に関する仕事
・美容歯科マネージャー
Q8 来年の受験生へのアドバイスもしくはメッセージ
・「プログラミング」って聞くと、「とても難しい!」イメージがありますが、やってみると意外と楽しいです。失敗しても繰り返しトライです。成功した時はとても達成感がありますので、ぜひトライしてみてね。
・プログラミングが何回も挑戦できるので思ったことを全部実行してみましょう!
・楽しく、緊張しないでやれば、大丈夫!
・プログラミングで受験する、しないは関係なしで一回体験してみることをおすすめします!!
・自分が考えていることを隠さずに、しっかり言おう!
・初めての受験ですが、気楽に受けていいと思います。入学を楽しみにしています。頑張って!
- 取材Memo
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花火の大輪を
相模女子の相生祭は、フィナーレとして花火をあげて終わる近隣の人々にも愛されてきたイベントです。ところが2020年度はコロナ禍で中止。そうすると、伝統ともいえる花火を見ないで卒業ということに。それを思った高校生は、花火のクラウドファンディングを立ち上げ、地域の方に協力をいただきながら、無事花火の打ち上げを行うことができました。学校の雰囲気も「プログラミング入試」で入ってきたアクティブな生徒の影響を受けて変わってきているといいます。乙女の学校からアクティブな学校へ。その象徴としての花火が大輪となって空に現れることを応援しています。