第7回「付属校の大学進学」初めての中学受験 素朴なギモンに答えます

第7回

Q 付属校でも上の大学に進学する比率がすごく違うのはどうして?

このところ私立大学が難しくなっていると聞いて、中学から付属校に入れたいと考えています。付属校を調べているのですが、学校により上の大学に進んでいる人数が全く違うことに気づきました。どうしてなのですか?

A 上の大学の「タイプ」で差が生まれている

有力私大が難化
まず、私立大学が難しくなっている事情についてお話ししましょう。

2016年、政府の地方創生政策の一環で、都市部への学生の流入に歯止めをかけるため、文部科学省は入学定員の超過を抑制する措置を採りました。大規模大学の場合、入学定員を超えたら補助金の一部をカットするとしたのです。入学定員を守るためには大学側は合格発表数を抑えるしかありません。合格発表数を減らしたため有力私大は軒並み「狭き門」になりました。中学入試、高校入試で付属校志向が強まった背景にはこうした事情があるのです。

ところがこの施策の波紋が大きかったことから、2018年9月に文部科学省は2019年から「縮減の実施を見送る」ことにしました。そのため実は多くの大学は合格発表数の絞り込みを止めました。が、この文部科学省の通知はあまり知られず、中学入試での付属校人気は続きました。

ただその間付属校の偏差値は上昇し、同レベルの進学校なら付属校の併設大学に十分受かる可能性が高くなりました。そのため進学先が限定されない進学校のほうを選ぶ受験生が多くなり、一概に付属校志向とは言えず“まだら模様”になっています。

また中学入試の出願先は、受験生・保護者が前年の入試状況から判断するので「隔年現象」が起こりやすいのですが、付属校はこの「隔年現象」がより際立っています。

付属校の多くが半付属校に
一方で、上に大学があっても卒業生の半数以上が進んでいる「正統派」付属校は、早稲田系、慶應系、明治系、青山学院系、立教系、中央系、法政系など、学部・学科が限定されない総合大学の付属校です。こうした大学の付属校は80%~90%が上の大学に進んでいます。逆の言い方をすれば、大学が有力な総合大学でなければ卒業生の多くは外部の大学に進み、上の大学には進まなくなっているということです。中には数%しか進学しないというところも。

ことに女子大の付属校にそれが顕著です。首都圏に女子大の付属の女子校(中学のある学校)は27校もありますが、このうち半数以上が上の大学に進んでいるのは女子美術大学付属、日本女子大学附属の2校しかありません。女子大の不人気が続いて他大学に進学させないと生徒が集まらないことから付属校というよりは進学校になっているのです。

学習院女子、香蘭女学校、日本大学豊山女子、立教女学院なども上の大学に大勢進学しているのではと言われる方がいらっしゃると思いますが、これらは上の大学が共学の総合大学です(学習院女子には現在学習院女子大学もありますが学習院大学と統合されます)。

また上の大学が単科大学の場合も在学中に進路希望が変わるので他大学進学が多くなっています。ただ、最近は政府も企業もデジタル人材を求めているので、社会全体に理工系志向が強くなっていて、理工系大学の付属校は併設大学進学者が多くなっています。このように上の大学がどのようなタイプの大学であるかで内部進学状況は大きく異なっています。他大学進学者の多い学校を「半付属校」という言い方もします。

プロフィール

中学受験の専門家 安田 理 先生
東京都出身。早稲田大学卒業。大手出版社にて雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。日本経済新聞、朝日小学生新聞、「進学レーダー」、「サクセス15」、ベネッセ「高校合格言」、まなび倶楽部、WILLナビ、moveonlineなど各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。著書に、「中学受験 わが子をつぶす親、伸ばす親」(NHK出版)、「中学受験 ママへの『個別指導』」(学研)などがある。

安田教育研究所ホームページ:http://www.yasudaken.com