21世紀型の新しいカタチの学校を目指し、しっかりと、のびのびと「生きる力」を身につける「こころが育つ進学校」として2001年に創設された自修館(ルーツは1910年の自修学校、1999年開校の自修館中学校を2001年に自修館中等教育学校に改組)。探究と言えば自修館と言われるほど、創立当初から探究学習に取り組んできた同校に、その魅力から小河校長先生にお話をお聞きしました。

※写真撮影時のみマスクを外していただきました。
探究学習の魅力はどこにあると思われますか?
「『知行合一』という言葉をご存知でしょうか。本校の創立者が大切にしてきた言葉ですが、行動をすることで真の知を得ることができる、知識と行動は一体のものという考え方です。探究は、調査や研究とは異なり、興味が沸いたことを行動しながら本当の知として追い求め続けるものですから、まさに『知行合一』なのです。本校では開校以来、探究を大切にしているのは、好きなことや興味があることを学びの入口にすると、学習面でも良循環が生まれるだけでなく、これからの難しい時代を生きていく問題解決力が身につくからです」
好きなことを学びの入口にするとどんな効果があるのでしょうか?
「趣味でもスポーツでも子供は自分が好きなことに対しては大変なエネルギー注ぎます。好きなことを極めるためには、本を読んだり検索して調べたり練習したり人に尋ねたり、何でも前向きに取り組みます。好きなことを探究するために、算数や理科や社会の知識が必要となれば自ら学ぶようになります。また 探究が進むと、もっと広く深く知りたくなり、そのテーマについてもっと知っている人と話す、そのテーマの現場に行ってみたくなるなど、多角的に物事を見る力や、もう一歩踏み出す力が養われます。例えば、ファッションが好きな生徒が最初はファストファッションについて調べていたのですが、調べていくうちに衣服の大量廃棄に関心が移り、さらには生産国の労働環境や経済へと視野が広がっていきました。探究で身につけた力は、自分が選んだテーマ以外の課題でも必ず発揮され、社会とどうつながっていくか、社会でどう生きていくかなど、大学を卒業した人生でも必ず活かされるものです。探究学習の効果はこういうところにあると思います」

https://www.youtube.com/watch?v=6adkQZQscVk
自修館の「探究」について具体的に教えてください
「1999年の創立時より探究の授業を全国に先駆けて導入してきましが、創立20周年を機に、探究をC-AIR(Change and Coexistence - oriented Agency through Inquiry and Research)と名づけ、バージョンアップしました。C-AIRでは、1年生は人文・社会系の文献調査やインタビュー調査、情報分析などの方法を学び、2年生は大学や研究機関と連携し、理工・生物系の「探究」を進めていきます。3・4年生は、12の学術分野ごとのゼミに分かれ、自らがテーマを決定し研究を進めていきます。5・6年生では、個人・グループでの研究を進めていきます」
C-AIRは、ますます進むグローバル化、ICT化、少子高齢化、景気の低迷など、変化の激しい社会においても、変化を前向きに分析的にとらえ、世界の人々と共存する視点を持ちながら自らも変化を生み出していく課題解決力を身につけるためにバージョンアップされたものだと言います。またこの取り組みは、三菱みらい育成財団から認められ同校は「高等学校などが実施する『心のエンジンを駆動させるプログラム』の実施校として採択されています。

「EQ」を活用されていることについて教えてください
「EQとはEmotional Intelligence Quotient(心の知能指数)の略語であり、1990年にアメリカの心理学社ピーター・サロヴェイとジョン・メイヤーが提唱した、企業の人材育成にも活用されている理論です。なぜ本校でEQを取り入れているかと言えば、私たちは一人で生きているのではなく、社会の中で共働して生きており、社会の中で自分の力を最大化できるようになって欲しいからです。例えばIQが高くても独りよがりなEQの低い人間はサポートを得られず個以上の力を発揮できません。また気分がいい時とイライラしている時では出てくる行動が違うように、感情はパフォーマンスに大きく影響するもの。一流のスポーツ選手がメンタルトレーナーを利用するのも、感情をコントロールがパフォーマンスに影響することが証明されているからです。本校ではEQを利用して、自分が持つ力を最大化できる感情状態を自分で作れるようにし、探究で得た力を最大限に発揮できる人間になって欲しいと思っています」
EQは、主にSS(セルフ・サイエンス)の授業で育んでいるといいます。SSでは自分の心や行動の特性を科学的に解析し、今後の人生の基礎となるコミュニケーション能力や、感情をコントロールする力をEQ検査を使って判定。生徒は、自分自身を客観的に見つめ、理解するようになります。「性格だから仕方ない」と思っていた自分のいやな部分をトレーニングで改善し、穏やかになった、社交性が生まれた、という変化が起こるといいます。
昼食は、担任の先生と一緒にクラスそろって会食をします。(お弁当持参が基本ですが、食堂に注文することもできます。)

海外FWの予定でしたが、国内に変更し行事を中止にせず実施しました。
今年度は全ての行事を感染対策に配慮しながら以前のように実施しています。
探究入試について教えてください
「県立中等教育学校の適性検査を意識した入試として、2月1日の午前に探究入試を行なっています。問題は、探究Ⅰ(理系寄り)探究Ⅱ(文系寄り)、いずれも100点/50分の入試となります」
最後に受験生と保護者の方へメッセージをお願いいたします
「本校の探究入試は、入学後の探究につながる試験として行なっている入試です。2科4科入試の勉強はもちろんですが、探究入試の受験をされる方は、普段からテレビや新聞で取り上げられている事象を多角的に見るクセをつけ、どんな意図があってどんな変化が起きているのかを考える訓練をするといいと思います」
「自分で選択したことには言い訳をしない。人に言われた人生ではなく自分で勝ち取った人生を歩んで欲しい」とおしゃっていた小河校長先生。当たり前のことのようですが、自分を知り社会を知る成長がなければ選択は難しく、そのために同校には、探究があり、EQがあり、「知行合一」があるのだと思い至る取材でした。

https://www.youtube.com/watch?v=3sYuk3qi5nI
教えて!学校のこと 試験のこと
生徒さんへのアンケートです。ぜひ参考になさってください。

Q. 中学受験を考えはじめたのはいつ頃ですか?
小学校5年生くらいです。姉と兄も私学に通っているので、自分も受験すると思っていました。
Q. 塾は通っていましたか?
個別指導の塾に通っていました。
Q. 自修館をどこで知りましたか?
通っていた塾の先生が自修館の卒業生で、面白い先生がいることや学校行事の話をしてくれて、自修館を受けてみようと思いました。
Q. 学校説明会に参加しましたか?
2回くらい参加しました。その時の印象は、小学校より広いなということと、探究についてはじめて知ったのですが面白そうなので興味を持ちました。
Q. 試験はどうでしたか?
数学が苦手なので、数学的な問題は難しかったです。
Q. 入学していかがでした?
コロナで最初は学校に通えず、タブレットで学校生活の過ごし方を動画があったり、ホームルームもタブレットだったのですが、通えるようになってからは意外とスムーズでした。

Q. 今、探究は何をしていますか?
3年生の今は、グループ探究を終えて個人探究を行なっています。探究のテーマは自分でよく見る動画サイトで、TikTokやYouTubeについて調べています。TikTokは短い時間で伝えるのが面白いですし、YouTubeは、テレビと違って自分の趣味に合うものを自分の時間帯で見ることができるのがいいです。動画の普及は、企業より個人が勝つ時代をつくるといわれているので興味深く調べています。ただ4年生で取り組む論文のテーマを動画にするかどうかは決めていません。
Q. これから中学受験をする人へメッセージをお願いします。
兄弟から自修館は静かな生徒が多いイメージがあると言われましたが、卒業生でもある塾の先生と話していて自分はそうは思いませんでした。自分は自修館しか受けなかったのですが、いろいろ自分で調べてみること、また一校に絞らず他の学校も受けてみるといいと思います。
- 取材Memo
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原動力は好奇心
好きこそものの上手なれといいますが、好きなことや夢中になっていることには「もっと知りたい!」「もっとレベルアップしたい」と思い、時間さえあればどんどんやってしまうもの。以前、取材した際には、昆虫好きが高じて、英語の学術名を覚え、育てた昆虫をネットで販売していた生徒さんまでいたといいます。趣味もスポーツも、好きこそものの上手なれ。自修館は、スポーツや趣味の“博士ちゃん”がたくさん集まった学校なのではないかと思いました。