6年間で人間として大きく成長していきます
葛飾区の下町にある「共栄学園」は、1938年(昭和13)年に創立された裁縫女学校をルーツとする歴史ある学校。2023年には野球部が夏の甲子園初出場を果たし、強豪として知られる女子バレー部は、2025年の春高バレーで優勝するなど、スポーツも強い文武両道の学校です。今回は学校の魅力や、約15年前から導入されている適性検査型入試について、広報部長・入試対策委員 増村薫先生にお話を伺いました。

建学の礎である「至誠一貫」について教えてください。
「至誠一貫」とは、すべての物事や人に対し、誠実に向き合いながら日々を過ごすという意味です。相手の立場を尊重しながら、そして自分自身のことも大切にしながら相手と接しよう、という姿勢を表現する言葉です。「至誠一貫」は、本校創業時からずっと大切にされてきた礎ですが、今の多様性の時代にこそ、この想いがより必要になっているのではないか、と感じています。
春高バレー優勝など、文武両道の学校としても知られていますね。
2025年の春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)では、女子バレーボール部が19年ぶりに優勝を果たしました。文武両道を教育理念とする本校では、全国レベルの部活であっても特別扱いは一切しません。選手は皆と同じように6時間目まで授業を受け、宿題も平等に出ます。毎日の部活終了時間も、他の部活と同じです。
全国から選手を集めるようなこともせず、皆自宅から通っています。今年の春高バレーの決勝戦には、2000人もの方々が応援にかけつけてくださいました。本校は全校生徒1000人なのに、2000人ってすごいじゃないですか。保護者やOB.OG,そして地元の方々も応援に来てくださったと聞いて、感激しました。


全国レベルの部活があると、生徒さんも嬉しいですよね。
同じ学校に通う先輩や仲間を応援できるって素晴らしいですし、自分も頑張らなければ!という刺激にもなると思います。春高バレーの優勝メンバーは、中学からの生徒が多いんです。自分たちと同じように入試に合格して入ってきた生徒が、しっかり文武両道を貫いているのだから、他の生徒だってさぼるわけにはいきません。女子バレー部は伝統ある部活ですが、その生徒たちがずっと「文武両道」の旗振り役をやってくれているのは、私たち教員から見てもとても誇らしいですね。
高校からもかなりの人数の生徒さんが入学されますが、中学から入るメリットとはどのような点でしょうか。
校外学習を始め、中学時代にいろいろな経験ができることだと思います。たとえば近年はSDGsが注目されていますが、自然を守ることの大切さを実感するには、机上で学ぶのではなく、現場で体感することが大切だと考えています。
中3は、修学旅行を兼ねて北海道に行き、保護湿原を訪れたり、外来種のザリガニ駆除なども行います。また、1~2カ月に一度、外部の方を招いて、中学生を対象とした講演会を実施しています。ルワンダ大虐殺時にボランティアに行かれていた方、犯罪心理学の専門家、アフリカ移住を検討している卒業生など、ジャンルを問わず、いろいろな話を聞く機会を設けています。
高校の3年間だけですと、どうしても時間が限られてしまいます。6年間の一貫教育だからこそ時間的にも余裕がある中学時代の3年間で、さまざまな体験をしてスポンジのように吸収し、土台をつくったうえで高校生活に入ることで、高校では自分が興味がある学びや探究に移行しやすくなるのでは、と考えています。


SDG’sを中心に調べたり考えたりしたことを発表しています。
「適性検査型入試」を導入した背景を教えてください。
2科4科型の受験勉強をしている小学生だけでなく、公立中高一貫校の試験に向けて、適性検査型入試の勉強をしている小学生にも門戸を広げたいとの理由からスタートしました。かれこれ15年ほど前から行っています。
受験者数、入学者は年度によってばらつきがありますが、公立中高一貫に合格するにはちょっと自信がないけれど、勉強してきたことを活かしたい、という気持ちで受験する小学生も多いですね。
「適性検査型入試」で入学した生徒の特長を教えてください。
いわゆる教科型の勉強をしてきた生徒とは、少し異なる考え方やものの見方をする生徒が多いように感じます。たとえば教科型の生徒は、問題に対する答えのルートを効率化させたい傾向がありますが、適性検査型の生徒はあまり効率化は求めず、ちょっと回り道して損はしないルートを導き出すという感じでしょうか。
効率化タイプ、回り道タイプなど、異なる考えを持つ生徒たちが同じクラスでともに学ぶことで、互いに刺激し合いながら成長できることは、とても大きなメリットではないかと思っています。
本校の場合、教科型で入学する生徒の方が圧倒的に多いのですが、適正型の生徒が浮いてしまうようなことはありません。これこそが、「至誠一貫」であり、互いに尊重し合う校風が根付いているからだと思います。
「個」を活かしつつ、どんなタイプの生徒も自然になじめることは、本校の校風のひとつ。高校から入学する生徒も多いのですが、高1でも、一貫生、高入生クラスに分けることなく同じクラスで学びますが、教員から見ても、一貫生なのか高入生なのか区別がつかないほど、すぐになじんでいます。

「適性検査型入試」の傾向と対策について教えてください。
都立白鷗、都立両国の適性検査型入試に準じた対策を、ということになりますが、そうした設問をこなして慣れるという以前に、世の中のいろいろな出来事、ニュースに普段から興味を持つようにしておくとよいと思います。また、回答する際には、文章を書くことが必須の問題ですから、文章を要約する力も身に付けておいてほしいと思います。
適性検査型の問題はとてもよく練られていて、一見すると、大人でも難しいと感じてしまうものもありますが。
確かに一見するとそう感じることがありますが、よくよく設問を読むと、まったく手も足も出ない、ということはなくて、考えながら解いていくと楽しくなる問題が多いと思います。教科型の問題は、知らなければまったく解けない知識問題が出題されたりしますが、適性検査型なら何かしら書けます。本校の場合も、適性検査型を採点していて0点ということは今までもありません。
私たちが問題を作る際も、設問を読み込んで解くことで、何かに詳しくなったり、新しいことを知ることにつながって楽しい、と感じてもらえるようにという想いも込めています。問題を解いた後、設問に関する内容に興味を感じて後から調べてみよう、と思ってもらえたら最高ですね。
日頃から、子どもの興味を広げるために、親ができることはありますか。
子どもが感じた興味をほおっておかないことでしょうか。子どもでも大人でも、「これってどうしてこうなっているんだろう」と感じることがありますが、子どもの場合はそうした疑問を素直に表現することが多いので、それを親子で調べたり、深掘りするのもよいかと思います。
たとえば虹は半円に見えるけれど、どうしてだろうと調べてみると、しっかり答えが見つかるんです。虹は本来は円形なんですが、地球の地平線に隠れて半円に見えるんです。宇宙ステーションなどから見ると、虹は円形なんですね。
中学受験の勉強を始める前から、日常の何気ない疑問に目を向け、「知りたい」「調べよう」という意欲を養っておくと、その後の学びや課題に取り組む前向きな姿勢にもつながると思います。
最後に、受験生や保護者にメッセージをお願いします。
どの入試で入学しても、在学中はたくさんの経験をさせて、「知」(学力の向上)、「徳」(自立した人材の育成)、「体」健やかな心身の発達 を育みます。先にもお話しましたように「文武両道」を貫いていますので、生徒たちが着実に学力を身に付けられるように、学びの環境も整えています。ICT化も、コロナ禍よりも前から行っていましたし、使える外国語教育にも力を入れています。また部活も全国レベルの運動部だけでなく、他校にはあまりない、少林寺拳法部、競技かるた部、eスポーツ部などもあります。一度学校見学にいらしていただけると、本校で6年間を過ごすメリットを感じていただけると思います。
- 取材Memo
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伸び伸びと学校生活を楽しみながら文武両道の環境で学べる恵まれた環境
取材を終えて部屋を出ると、校内のあちこちで部活に励む生徒たちの姿がありました。どの生徒の姿もイキイキとしていて、学校生活を全力で楽しんでいる様子が伝わってきます。春高バレー優勝などで共栄学園を知った方は、高校のイメージが大きいかと思いますが、先生にお話を伺うことで、中学から入学するメリットがとても大きい学校であることがよくわかりました。校舎もきれいで、最寄りの京成本線「お花茶屋」駅から徒歩3分の立地も魅力。偏差値ばかりにとらわれることなく、伸び伸びと学校生活を楽しみながら、文武両道の環境で学びたい生徒にとってはとても恵まれた環境だと思います。