2026年に創立100周年を迎える八王子実践中学校は、八王子で最も古い歴史を持つ私立中学校・高等学校。バレーの強豪校として有名な高校は1学年15クラスの編成ですが、中学校は1学年1クラスという少人数のクラス編成。生徒と先生が密に相談できる時間が多く、学習以外の相談にも答えてくれる、一人ひとりの学びと成長を手厚く見守る教育を行っています。
同校への入口となる入試は、2019年に2科・4科入試を廃止し、入試はすべて新タイプ入試という入試改革を実施。その結果、様々な個性をもつ生徒が集まり、学校が「個性と才能を自由に伸ばす 一人ひとりが輝ける場所=Diversity」になっているといいます。 今回は、適性検査を熟知する入試広報部 田母神先生に、適性検査型入試が意図することや適性検査型入試が生み出すことなど、大変ためになるお話をお聞きしました。
まず2科4科入試をやめた理由をお聞かせください
「中学受験をするのに、習い事をやめ、塾に行き、2科4科の勉強をして合格というのではなく、子供の可能性を見るのに、他の見方があるのではないか。地元密着型の学校として、2科4科の学力では測れない能力を多方面から見出し、少人数教育を活かして、思考力や判断力、さらには表現力を育成し、学力偏差にとらわれない、新しい発想を培う教育を展開したい。そのために本校への入口となる入試を全面的に新タイプ入試にしたと聞いています。私はそんな学校の考えに共感し本校に2年前に来たのですが、今は特に適性検査型入試を本物の適性検査にするために進化と深化に力を注いでいます」

https://www.youtube.com/watch?v=8TLkkGnsCJU
適性検査型入試になぜ力を注いでいるのでしょうか?
「公立校の適性検査は、大学の新テストと同じ考えで行っているものです。小学校で学んでないことは出題されませんが、思考力、判断力、表現力が問われる教科横断型の問題が出題されます。そしてこれらの問題は、正解は一つではない良問であり、適性検査受検で入学してきた生徒は、学ぶ意欲があり学び方がよくわかっているので、入学してからも学力が伸びるといわれています。本校をはじめ私立校は、そんな公立校の適性検査を意識した問題を作問して試験を行っていますが、適性検査の問題づくりは、出題者側も膨大な時間と労力とスキルが求められる、とても大変な作業なのです。適性検査の良問がつくれれば、先生のレベルは上がり授業のレベルも上がっていくものなのです」
適性検査の作問ができると授業のレベルも上がる?
「適性検査Ⅰの作問に6名の教員、適性検査Ⅱの作問に15名の教員が携わっていますが、適性検査の作問で大切なのは、『何がいいたいか』をパッと掴めて『その表現は合っているか』です。これは受験生にも求められることですが、作問側もこれが読めない教員は、核心が掴めず問題を作れません。また核心にたどり着いても、『この設問でどんな答えが出されるのか』『その答えはこちらが求める答えにたどり着くのか』等々、教員同士がやり合って深めていくのですから、その深めていく過程が教員の知恵肉となり、それが授業にも反映されていくのです。2科4科を教える教員ではなく、適性検査の作問ができる教員であることはとても大切なことなのです。実は教えることと学ぶことは同じで、それは止まることなく進化と深化を続けていくものなのです」

https://www.youtube.com/watch?v=VIdzE2IgTAs
適性検査の対策はいつからはじめるとよいでしょうか?
「小学6年生の9月に受験を決めて10月から塾に通うので十分間に合うと思います。適性検査には思考力が求められますが、それは2科4科力の上にのせる思考力ですから、2科4科の勉強も大切です。もし4年生から塾に行くのであれば2科4科をしっかりやった方がいいです。ではなぜ塾は小6の10月からでいいというかといえば、適性検査に向かない子は、1年間塾に行ってみっちりやっても受からないからです」
適性検査に向いている子はどんな子なのでしょうか?
「知的好奇心がある子です。4年生でも時間をかければ適性検査の問題は解けますから、2科4科の勉強の合間に、適性検査の問題を入れてみると良いでしょう。2科4科の勉強ばかりですと飽きてしまいますから、適性検査の問題を差し込んでみるといいと思います。その際に、適性検査の問題ときちんと正対でき、自分の勝手な思い込みでなく『この人は何をいっているのかな』と考えられ、答えるための要素がきちんと整理でき、なおかつそれを正しく表現できる子が適性検査に向いていると思います」
適性検査では、情報を正しく早く読み取り、それを整理した上で、表現できることが求められますが、なかなかそんな力を育ててくれる塾はありません。作文のテクニックは教えてくれても、正解のない表現を教えるのは至難の業。大切なのは「問題をよく読みなさい」ではなく、「相手をわかってどういう意図で聞いているのかを理解して答えなさい」。これを小学生が身につけるためには何をすればいいのだろうか。

適性検査に備える方法はあるでしょうか?
「生まれた月でも違いますし、兄弟の有無でも子供の発達段階は違います。保護者は子供の発達段階をわかった上で、一人の人間として接し続けることが大切です。例えば家の片付けにしても、子供と一緒にやって、前に片付けたのにどうして散らかってしまったのか。それは大きさで片付けたからだったのか。場所だったか。それでは今度は種類で片付けてみようなど、整理の仕方を考えるようにすると分析して考えるクセが身につきます。手間暇はかかりますが、『片付けなさい』ではダメなんです。また小学校でも、あらゆる活動を人任せにしないで、積極的に参加して『こういう風にABCで分けてみよう』とか、ファクターを決めてそれを評価する訓練ができるといいですね」
適性検査には、作文力が必要、図表を読み解く力が必要、読み込める力が必要などといわれますが、本当に大切なのは、何よりも本質を探究する姿勢、つまり知的好奇心があるかどうかなのだと思いました。
来年受験を考えている受験生や保護者へのメッセージをお願いします
「2022年入試から南多摩中等教育学校の併願受験を狙う受験生のための試験問題として出題しています。南多摩中等教育学校の併願を考えている受験生は、年数回行っている問題解説に参加すると受験対策になります。また本校の適性検査型入試で入学した生徒は、公立難関校にチャレンジします。南多摩中等教育学校の併願校をお探しの受験生は、ぜひ本校の説明会に足を運んでみてください」
適性検査を熟知する先生の参画により進化と深化が進む適性検査型入試を展開する八王子実践中学校。高校での公立校受験もサポートしており、公立校受験生の併願校として見逃せない学校となっています。
- 取材Memo
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受験は家でするもの
今回の取材では、「本質」や「核心」といった言葉が何度も使われたことが印象的に残りました。大切なのは、トピックスよりも「本質」や「核心」。取材中に「受験は家でするもの」というお話もあり、「子供が勉強している横で保護者がテレビを見たりゲームをしているのでは受からない。1年間くらい一緒に勉強しなければだめ。できない時は仕方ないので、できるときは一緒に勉強する」というお話もありました。確かに受験は、塾でするものではなく家でするもの。塾と家、どちらでもよさそうな気がしますが、そこには本質的な違いがあることを改めて気づかされる取材となりました。