第4回「ダブルディプロマ」初めての中学受験 素朴なギモンに答えます

第4回

Q 「ダブルディプロマ」のメリットは?

最近「ダブルディプロマ」ということをよく耳にするようになりました。国内の高校卒業資格と同時に海外の高校の卒業資格も取れるということのようですが、ふつうの国内の高校から海外大学に進んでいる人も大勢います。「ダブルディプロマ」のメリットって何でしょうか?

A 海外大学進学+「世界標準」の学び

「ダブルディプロマ」というのは、国内と海外の2つの学校の卒業資格を得ることができる教育プログラムのことです。首都圏では8校がこのプログラムを用意しています。

「ダブルディプロマコース」のある学校
「ダブルディプロマコース」を最初に設けたのは文化学園大学杉並です。2015年にカナダのブリティッシュコロンビア州のカリキュラムを学ぶことで、卒業生は日本とカナダ両方の高校の卒業資格を得ることができるようになりました。卒業後はカナダの大学だけでなく、アメリカ・イギリス・アイルランド・オーストラリア・ニュージーランドなど英語圏の大学への進学が可能になっています。
その後、神田女学園、国本女子、麹町学園女子など女子校を中心に「ダブルディプロマコース」を設ける学校が増えています。共学校では、郁文館、森村学園などが設けています。それぞれで、協定先の国、学びのスタイル等が異なります(後述)

海外大学に進学しやすい
一般の高校から英語圏の大学に進学しようとすると、英語の試験(IELTSやTOEFLなど)で高得点を取る、英語準備(Foundation)コースを経るなどが必要ですが、現地の高校の卒業資格があるのですから、これらが必要でなくなります。

国内大学にも進学しやすい
国内大学に帰国子女枠で進学することもできます。学部的には国際教養学部などが多いようです。実際、文化学園大学杉並ではこのコースができてから難関大学合格者が格段に増えています。

「世界標準」の学び
いま日本の教育もこれまでのような受け身の学習でなく主体的に学ぶ姿勢の育成へと転換しつつありますが、欧米では学習者中心で探究型の学習が展開されています。思考力、コミュニケーション力、社会のために考え、行動する人間力をつけることが重視されています。そうした「世界標準」(グローバルスタンダード)の学びを経験することも大いなるメリットと言えます。

学校により異なるシステム
文化学園大学杉並は5週間ほどカナダのブリティッシュコロンビア州の高校に短期留学しますが、神田女学園、国本女子、麹町学園女子などのケースでは1年8か月とか長期にわたってその国で過ごす必要があります。当然かかる費用は大きく異なります。
森村学園の場合は、放課後や週末にオンラインでアメリカの高校の授業を受講し、単位を取得することで日米ふたつの卒業証書を手にできるというプログラムです。ひと口に「ダブルディプロマ」と言っても、学校によりかなり違うのでよく調べるようにしてください。

プロフィール

中学受験の専門家 安田 理 先生
東京都出身。早稲田大学卒業。大手出版社にて雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。日本経済新聞、朝日小学生新聞、「進学レーダー」、「サクセス15」、ベネッセ「高校合格言」、まなび倶楽部、WILLナビ、moveonlineなど各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。著書に、「中学受験 わが子をつぶす親、伸ばす親」(NHK出版)、「中学受験 ママへの『個別指導』」(学研)などがある。

安田教育研究所ホームページ:http://www.yasudaken.com