女子聖学院の教育スローガンであり、目指す人物像でもある「Be a Messenger」。創立から117年。キリスト教教育を基盤に、他者のため、そして社会のために役立つ人になれるよう、「自分のことばをもつ」女性の育成を目指しています。聖書の中に「若者に過ぎないと言ってはならない」ということばがありますが、これは「どのような場面でも、どのような相手にも、伝えようとする覚悟を持ちなさい。すべては、そこから始まるのです」という教え。「Be a Messenger」は、自分のことばで表現することを最も大切にする、同校の教育の根幹です。
それは、入試においても同様です。「英語表現力入試」で入学し、中2になった今、女子聖での学びを十二分に堪能するK・Iさんと、英語科のブレイクスリー・ネイザン先生にお話を伺いました。
■「Be a Messenger」に惹かれて、受験を決意しました
入学して1年余り。学校生活について尋ねると、K・Iさんは「私は女子聖にすごく感謝しています。女子聖で学ぶことで、勉強が好きになったからです」と言いました。
「先生方の熱心なご指導を通して自然と、何事も全力で考えられるようになりました。私は、小学校まではそれほど勉強が得意ではなかったのですが、今は大好きです。夢中になっていることは何ですかと聞かれたら、『勉強すること』と言えるくらい(笑)。先生方はよく『メタ認知が大切』と言われるのですが、私もそれを心がけています。例えば、中2になって中1の時のノートと見比べてみると、『去年の自分』と『今の自分』の差がわかり、成長しているんだなとワクワクして、やりがいを感じます。1年間この学校で学んで、学びを自分の中に取り込むことができるようになったと思います」
「英語表現力入試」は、【リスニング・課題文暗唱・自己紹介・算数基礎・日本語による面接・保護者同伴の日本語による面接】という流れで実施されます。
もともと英語が好きで、幼い頃から習っていたというK・Iさんですが、この「英語表現力入試」を受けたきっかけは何だったのでしょうか。
「小6で英検3級を取得していましたが、『英語表現力入試』を受けるきっかけになったのは、女子聖の「Be a Messenger」というスクールモットーを知ったことです。友達同士でも、お互いに自分の気持ちを伝えられたらコミュニケーションが楽しくなりますが、自分の思っていることを相手にどれだけきちんと伝えられるか、その大切さを私自身とても感じていました。ですから、『とにかくこの学校に入りたい!』と思ったのが最初でした。そのあとで『英語表現力入試』があることがわかったので、ぜひ受けたいと思いました」
「英語表現力入試」を受けてみて、どうでしたか?
また、どのような準備をされたのでしょうか。
「試験中のことは緊張していてあまり覚えていないのですが、『課題文暗唱』や『自己紹介』の対策としては、課題文や自分で作った原稿を覚えた後、自分の話しているところを繰り返しビデオに録画して何度も見返し、メモを取りながら客観的に表現できているか自己採点をしました。あと、『自己紹介』では一文を短くしたほうが伝わりやすいというのを意識して、家族や習い事、得意なことなどを具体的に、短くまとめることを心がけました。本番は一度きりなので、どれだけ練習できるかを一番に考えました。入試は受験生にとって、自分としっかり向き合って道を切り拓いていく大事なイベントです。そのことを自分でどう考えるのか、自分を理解すれば言葉にも表せるし、入試でもコミュニケーションができるようになると思います」
女子聖に入学して、英語の勉強はどうですか。
「小学校の時、英語は好きでしたが、異文化にはあまり関心がありませんでした。でも、女子聖にはネイティブの先生が大勢いらっしゃるので、異文化にも興味を持ち始め、英語がさらに身近になりました。私の今の夢は、キャビンアテンダントになることですが、英語を習得すれば職業選択の幅も広がります。中1の時に準2級を取得しましたが、とにかく英語が好きなので、英語を活用して外国人の方と交流できる仕事に就きたいと思っています」
この入試は、どのようなタイプの人に向いていると思いますか。
先輩として、受験生にメッセージをください。
「英語が好きな人はもちろんですが、英語に限らず、今、勉強に前向きになれない人にも、ぜひこの入試を受けてほしいです。女子聖でなら、英語はもちろんですが、どの教科も楽しく学ぶことができます。私は小学校の時、算数が苦手でしたが、女子聖の授業で数学に興味を持ち、今では好きな科目の一つになりました。『苦手』が『好き』に変わる大きな一歩があり、女子聖に入って本当に良かったと思っています」
■「自ら学ぶこと」と「学ぶ自由」を学んで、Enjoy Learning!
愛称「ネイト先生」は日本に来て20年、女子聖の先生になって17年が経ちます。中2・3で「英会話」、高1で「コミュニケーション英語」、高2・3では「アカデミックライティング」を受け持ち、この「英語表現力入試」を牽引するお一人でもあります。
まず、ネイト先生にとって「ことば」とは何でしょうか。
「『ことば』とは、ジェスチャーも含めて、お互いの思いを伝えるための表現手段です。今は小学校でも英語を学ぶからでしょうか、受験生を見ていると、読む力や書く力はあまり変わらないのですが、リスニング力や表現力が上がってきていると感じます。以前に比べると、英語を使って伝えようとするハードルが下がっているように思います」
「英語表現力入試」は、主に❶リスニング❷課題文暗唱(レシテーション)❸自己紹介という3つのパートに分かれますが、評価するポイントを教えてください。
「すべてにおいて、受験生の『表現』する力を見たいと思っています。とくに❷のレシテーションでは与えられた文章を棒読みするのではなく、絵本を読み聞かせる時のように、嬉しいところは嬉しいように、悲しいところは悲しいように感情移入して、その物語を語ることが大切になります。覚えた文を、自分なりの表現で語るのです。そうすることで、ジェスチャーも含めて『生きた英語』になりますから」
ニューヨークで就職するつもりが、同じ大学に日本人の友達がいたことがきっかけで来日したネイト先生。英語の授業を受け持つほか、定期的に英語礼拝も行っています。
「私はクリスチャンですが、私が英語礼拝をする時は、例えば『美しさ』について『神様の鏡に映るのは、外見ではなく内面』であることを、なるべくシンプルな英語で伝えるようにしています。時には、Slide Showを使って視覚的インパクトを与えながら(笑)。私自身、毎日、さまざまな先生方の礼拝メッセージを聴くことができるのも、女子聖の魅力の一つだと思っています」
女子聖で学ぶ生徒さん方に期待されることは、どんなことですか。
「勉強するなかで、自信を持ってほしいです。英語だけでなく、すべての教科を学び続ければ、他の国の人々とも学んださまざまな事柄について英語で語り合えるようになりますから。それは、人生においても、仕事をするうえでもとても意味のあることです。ですから、『自ら学ぶこと』を学んでほしいですし、『学ぶ自由』も学んでほしいですね」
では最後に、受験生にメッセージをお願いします。
「重複しますが、受験生のみなさんも、本校に入学したら『自ら学ぶこと』と『学ぶ自由』を学び、さまざまな教科に意欲をもって取り組んでほしいです。また、英語に限らず、多様な言語を楽しんでほしいですね。そうすれば世界中の人とコミュニケーションできますし、視野が広がり、内面的にも成長することができます。そして何より大切なのは、楽しみながら学ぶことです。Enjoy Learning!」
- 取材Memo
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「ことば」を獲得する教育は、人としての根幹を育成すること
心で感じていること、頭で考えていることは「ことば」よりも膨大で、「ことば」に集約して表現することは難しいものです。だからこそ、自分のことばを持とうとすることは、私たちにとって学びの根本と言えるのではないでしょうか。今回の取材を通して、女子聖のスクールモットー「Be a Messenger〜語ることばをもつ人を育てます〜」は、すべての物事を自分で深く考え、他者と語り合って多様性を知り、協働する道を探っていく普遍の学びを意味しているのだと感じました。日本語でも、英語でも。そして、何事にも意欲旺盛なK・Iさんと、長年、懐深く生徒たちを見守るネイト先生のお話からも、女子聖に流れる空気感が存分に伝わってきました。