【日本工業大学駒場】のプレゼンテーション型入試は、「得意を活かして進学する」一生モノのスキルにつながる入試。

プレゼンテーション型入試

日本工業大学付属の中高一貫校でありながら、近年は付属外大学への合格実績が伸びている日本工業大学駒場中学・高等学校――通称、日駒。2023年からは中高ともに普通科専一校となり、同校ならではのユニークな学習支援体制も相まって、ますます期待や注目が集まっています。ここでは、2022年から導入された個々の得意を活かす「プレゼンテーション型入試」について、入試広報主任の堀口先生と、昨年度の同試験に合格した中学1年生にインタビュー。あわせて、学校生活のあれこれや、中学1・2年次の早い時期から「基礎をとことん磨く」家庭学習習慣化の取り組み「ファイトノート」など、日駒の “躍進の秘密” に迫ります。

入試広報主任 堀口博行先生
「この入試で問われるのは、自分の頭で考えるちからと、それを整理して、
人に伝わるようにことばや構成を工夫し、表現するちからです」

Q.正解のない試験だからこそ、個性的な意見や発表を評価するプレゼンテーション型入試について教えてください。

「本校のプレゼンテーション型入試は、『朗読への感想(45分)』と『プレゼンテーション(発表5分 質疑応答5分)』の2つで構成されます(それぞれ100点満点)。『朗読への感想』では、約5分間の朗読(詩やエッセイ、論説文などの一節)を聞いて、心に浮かんだことを45分間で400~600字にまとめます。『プレゼンテーション』では、本校が事前に提示したいくつかのテーマ(※)から1つ選び、入試当日までに資料を作成して持参。当日は、その資料をもとに教員2名に5分間プレゼンテーション(発表)します。その後、内容について5分間の質問タイムがありますので、それに答えてもらいます。資料は、A4サイズ以上の用紙を用いて手書きで作成することが条件です。枚数は問いません。大きな紙1枚にまとめても、複数枚に分けてもかまいません。また、文字だけでも、図表や絵や写真を使ってもかまいません。こうでなきゃいけない! という決まりもまったくありませんので、自分らしさを大切に、みなさんが持っている潜在的なちからを自由に発揮してください」
※令和7年度のテーマは「私の得意なこと」「自分の名前の由来」「私の好きなことば」「私の家族」の4つです。

『朗読への感想』試験は、図書館で実施します。ふだんから本や新聞を読んで
感想を書く練習をするのがおすすめ。

Q.朗読を聞いてその場ですぐ感想を書くのは、結構大変そうですね。

「朗読中はメモを取ることができますし、朗読後は読みあげた内容をプリントにして配ります。プリントも参考にしながら自分の思ったことを自由に書いてください。ヒントをお伝えするとしたら、朗読には抑揚やことばの強弱、テンポの遅い早いがあるので『大事な部分はどこなのか』きちんとわかったうえで、あらためて自分の身に引きつけて考えることが大切です。ふだん家庭でも新聞などの記事を読んで、それに対する自分の考えを書きだし、『どう書いたらもっとわかりやすく伝わる文章になるかな?』といろいろ工夫してみるとよいでしょう」

試験官の先生がたと直接向き合う『プレゼンテーション』試験では、
資料にあらわれる人柄や発表態度も評価項目のひとつです。
※発表を邪魔しないよう、許可を得たうえで教室のドア越しに撮影しています。

Q.『プレゼンテーション』の資料を手書きに限るのは、なぜ?

「受験生の環境のちがいでハンディをつけたくないのと、もっと大きな理由としては『取り組み姿勢』をしっかり評価しますよ、ということですね。きれいな字じゃなくてもいいから『ていねいに、人に伝わりやすいように書けているか』や、文字だけの発表でもOKですが、絵や写真、図表を入れる場合は『レイアウトを工夫したり、努力の跡が見えるか』なども採点対象になります」

実際に、過去の試験でも資料のスタイルはさまざま。黒板に貼っての発表もあり、手で持っての紙芝居方式もありで、そこからも受験生一人ひとりの個性が垣間見えるそうです。面接担当の先生がたにも、毎回新しい気づきがあると教えていただきました。

Q.そのほかに、評価のポイントは?

「発表内容がありきたりな借りものではなく、自由な発想で自分らしく表現できているかどうか。さらに、声や態度。資料を使った発表を行なっている間、自信をもって堂々と自分の考えを述べることができているかどうか。最後の質問タイムに、きちんと受け答えができているか、なども重要な評価項目です。教科型入試では知ることのできないその子なりの個性や人柄、潜在的な能力を見る試験だからこそ『話すことや伝えること、表現することが好き』あるいは、『好きなことや得意なことに打ち込んでいて、教科型入試では適性を活かせそうにない』というお子さんに、ぜひチャレンジしてほしいと思います」

プレゼンテーション型入試は、その子なりの「好き」や「得意」を潜在能力として評価するための試験です。時々「コンテストで賞を獲ったりスポーツで優勝したりなど、何か “特別な実績”があったほうがいいですか?」との問い合わせがあるそうですが、実績の有無は評価には関係しないので、安心していいようです。

Q.受験を考えているお子さんや保護者に、対策のアドバイスをするとしたら。

「“事前準備と練習”でしょうか。『プレゼンテーション』では資料の作りこみと、持ち時間5分でしっかり話ができるようになるまで、家庭で何度もリハーサルをくり返すのが何よりの対策です。そのためにはご家族の協力も不可欠。もっとも、これは『朗読への感想』にも言えることですが、ふだんから会話が多く、しっかりコミュニケーションがとれている家庭ほど、お子さんのやる気が保たれ、スムースに対策が進んでいくのではないか、という実感があります。親子が短い単語のやりとりで意思疎通するのではなく、お互いに自分の考えを筋道立てて伝える習慣があるかどうかが問われる試験でもあると思います」

特に中学課程ではすべての基本となる“圧倒的な基礎学力の養成” を目指した緻密な指導が行われています。生徒が協働(互いに教え合い、話し合える)する実践的な学びの環境が、自発的な問題意識にもつながっていくとのこと。

入学後の英語の授業のひとコマ。

Q.入学後のイメージについて教えてください。

「プレゼンテーション型入試で合格・入学できたということは、本校がその生徒の潜在能力やユニークな個性、将来的な可能性を高く評価しているということ。ぜひ入学後の学校生活でも、さまざまな場面で他の生徒に刺激を与える存在になってほしいと思います。たとえば、コミュニケーション能力を求められる場面でリーダーシップを発揮したり、誰もが気づかなかった視点で『こうすればもっとよくなる/楽しくなる』などの提案をしたり。早くから自分の強みを理解して、6年間の学校生活の中でそれをさらに磨きあげれば、大学進学にももちろん役立ちますし、何よりも就職して社会に出てからは、まさにかけがえのない財産になります。そうした意味でも、プレゼンテーション型入試で入学する生徒に、私たちも大いに期待しています」

Q.得意を伸ばす以外に、学力を伸ばすための独自なサポートは?

「代表的な取り組みとしては、一日の記録と学習課題を組み合わせた本校独自の家庭学習ツール『ファイトノート』があります。家でその日の学習内容と課題を見開き2ページに記入し、朝集めて教員がメッセージを記入~放課後に返却します。毎日の積み重ねは大変ではありますが、手を動かして何かを『書く』という行為は、思考を深めるのに最適。ノートを通じて生徒の現在の状況を私たち教員が把握して、適切な励ましを行い、それをリアルタイムで保護者の方と日々共有できるため、家庭と学校とをシームレスにつなげ、生徒のすこやかな成長を育むとともに学習意欲を支えてくれる大切なツールです。その他にも、2022年からは光風塾の中学生部門である『光風塾ジュニア』もスタートしました。高校生対象の光風塾の長所である『充実のオリジナルテキスト』『東大生講師による指導』はそのままに、楽しくわかりやすい授業を実現。数多くの現役東大生講師や、最難関大学に合格した本校出身の先輩講師が、皆さんの勉強を強力にバックアップしてくれます。しかも、一部教材や模試の受験費用等を除き、費用は『無料』です」

『光風塾ジュニア』での受講風景。基礎学力をしっかりと身につけることで、
高校から大学受験までの道のりをスムーズに進むことが出来ます。
※中学2年次7月スタート/学年40名定員、事前選抜テストあり。

Q.最後に、受験を考えているお子さんや保護者へのメッセージをお願いします。

「本校の校訓は “誠実” “明朗” “勤勉”。 私たち教員が大切にしているのも、一人ひとりの生徒と向き合うときの『熱』。これこそ、日駒教育の根源です。自分に対しても、他の誰かに対しても、常に誠実に向き合い、明るくほがらかに、学業や課外活動には全力で取り組む。そんな生徒が集う場にしようと、私たちも日々真摯に努力を続けています。一人ひとりが持っているすばらしい可能性をしっかりと花開かせるために、学校全体でサポートしますので、まずはあなたの得意を活かせるプレゼンテーション型入試に、ぜひともチャレンジしてみてください。あなたとの出会いを心から待っています」

 

取材Memo
歴代の学校長が「面倒見の良さが本校の真骨頂」と表明して来られた通り、日駒の特長は、生徒の良いところを見つけて伸ばす「美点凝視」に加えて、大学進学に向けても生徒一人ひとりに寄り添い、より高い目標への挑戦をサポートする「熱」のある指導。学校取材当日も、校長先生が来校された保護者と生徒に自ら率先して声をかけ、笑顔でコミュニケーションをとられるようすを目の当たりにして、日々まっすぐに教え子と向き合い、学びを支え続ける先生がたの「熱」を、実際に肌で感じることができました。

教えて! 受験のこと、学校生活のこと。

勉強も頑張りたいけれど、自分の好きなことにもチャレンジしたい
S.Sさん(中学校1年)

Q.日駒を知ったきっかけ・受験の決め手は?

「知ったきっかけは、塾の先生です。『こんな学校があるよ。ここはしっかり勉強見てくれるからいい学校だしおすすめだよ』と教えてもらいました。自分ではあまりおぼえていないのですが、親が言うには小3くらいから『中学受験したい』と言ってたらしいです。それで、小5から受験準備を始めました。勉強自体は好きなほうで、そのころから何となく『中学にはいったら勉強を頑張りたい』と思っていました。ただせっかくなら中高の6年間は受験勉強中心ではなく、自分の好きなことや興味があることに打ち込みたい、と思って、そんな環境がありそうなこの学校を志望校に選びました。でも、実は小6秋までは別の学校が第一志望で…ここを第一志望にしたのは11月の学校説明会に参加してからです。その時、教科ごとの説明がすごくおもしろくて、特に一番苦手だった算数の学習アドバイスを受けて『わかりやすい!』って感動したのが決め手になりました。あと、オープンキャンパスで受けた国語の授業も、読解のコツがわかりやすかったです」

Q.プレゼンテーション型入試を選んだ理由は? また、どんな内容で発表しましたか?

「最初は親のすすめで(笑)。この試験は受けずに学科試験だけ受ける選択肢もあったんですけど、知らない人に自分の思いを伝える機会なんて小学校ではなかったし、自分のことを発表する、っておもしろそうだな、と思ったので受けることにしました。テーマは『自分の得意なこと』を選んで、目標を決めて考えて行動する自分の性格や、他の人にはない強み(個性)を伝えられたらいいな、ということで、夏休みにSDGs関連の地域のイベントに参加したことなども含め、模造紙2枚にまとめて発表しました」

Q.本当に、発表自体なかなかない貴重な体験ですよね。実際に受けてみての感想は。

「家で練習してきたのもあって、緊張もあまりせず。逆に楽しかったです。教科型と併願していて、教科型の入試で先に合格通知が来てたので、それもあるんですが…せっかく頑張って準備してきたので、やり残しがないように、発表はベストを尽くしましたし、いいものになったと思います」

Q.かなり時間をかけて準備した感じですか。

「小6夏休みから半年かけました。と言っても、平日は学科の勉強があるので、毎週末に準備しました。資料はあえてシンプルに作ったんですが、発表は親にも聞いてもらって、手直ししながら内容をすらすら説明できるくらいまで何度も何度もリハーサルしました」

Q.さっきのお話通り「目標を決めて考えて行動する」そのものですね。では、入学してからのことをお聞きします。学校生活はどうですか?

「うれしかったのは、クラスメイトがみんなフレンドリーで、あっという間に仲よくなれたことです。特に、中学1年生全員が参加する4月の宿泊行事『フレッシュマンキャンプ』の存在が大きかったと思います。往きのバスの中ではなんとなくぎこちなかったのに、帰りはとにかく盛り上がって、一体感がすごくて。本当に楽しい思い出になりました。あと、授業もわかりやすくて楽しいです。特に英語。中学にはいってから、いきなり英語が好きになりました」

校内で一番のお気に入りスポット、屋上の芝生広場にて。
「仲良しの友達とここでお昼を食べたり、おしゃべりしたりするのが大好きです」

Q.ファイトノートは活用できていますか?

「はい。習慣になるまではとにかく大変ですけど、毎日欠かさず書くことで自分の気持ちが整理できるのと、先生や親からのコメントを読むのが楽しいので、モチベーションになります。テストで高得点をとれた時先生が『頑張りが自信につながってくるね』と書いてくれたのが嬉しくて、印象に残っています」

実際に撮影させていただいたS.Sさんのファイトノート。日々の頑張りが伝わってきます。

Q.将来の夢や、今後の目標について教えてください。

「将来の夢は、貧困問題に興味があるので、地域発のSDGsイベントなどを通じてもっと学びを深めて、いずれは何か自分で考えてアクションが起こせるような存在になりたいな、と思っています。身近な目標としては、吹奏楽委員会でホルンを担当してるので、練習を頑張って、尊敬する先輩に負けないくらいうまくなりたいです」

Q.どちらもすてきですね。最後に、受験を考えている後輩にひとことメッセージをお願いします。

「プレゼンテーション型入試は、自分の気持ちを伝えるのがいちばん大事だと思います。あとは、見た目にわかりやすいよう資料づくりを工夫したり、発表の練習もひとりではなく誰かに聞いてもらって手直しして、伝えたいことは何か軸を決めると、自分の個性がしっかり出る入試だと思うので、おすすめです!」

取材Memo

優しく勁い(つよい: しなやかで折れない)心を育む
本文中でも紹介した無料の放課後塾『光風塾ジュニア』には、難関大学へ進学した先輩や東大生の講師が多く在籍。年齢も近い先輩受験生の指導のもと「楽しく学べています」と、生徒本人や保護者にも好評とのこと。『ファイトノート』や動画学習ツールの活用など、多方面にわたる学習サポートも魅力です。また取材当日、校内ですれ違った生徒たちの礼儀正しさも印象的。『人柄教育』をキーワードに、「優しく勁い(つよい: しなやかで折れない)心を育む」を体現するための学校全体での取り組みの成果を感じることができました。