新タイプ入試の実施校が増え始めたのは2010年頃。この10年で新タイプ入試はどう変わってきたのか。またこれからはどうなっていくのか。新タイプ入試にいち早く注目し、その動向を見守ってきた首都圏模試センターの方々に新タイプ入試ガイドがお聞きしました。
まず2021年の私立中学受験は全体としてどうだったでしょうか?
北氏:今年はコロナ禍の影響で受験生が減る可能性も懸念されましたが、私立・国立中学校の受験者数は50,050名で、前年に比べ650名増えて、16.86%という史上最高の受験率となりました。これはコロナ禍で、オンライン授業などのサポートがほとんどなかった公立学校に不安を持ったご家庭が、素早くオンラインでの授業やホームルームなどの学校活動を再開し、生徒のメンタルの面まで含めて手厚くサポートをしてくれた私立を選んだ結果ではないかと思います。また今年はチャレンジ受験より確実性を求めた安全志向も目立っていたようです。
その中で新タイプ入試はどうだったでしょうか?
鈴木氏:東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木で新タイプ入試の実施校は210校。その中に国立が4校、公立が23校含まれていますので、私立での新タイプ入試実施校は183校になります。新タイプ入試は、実施校だけではなく入試のタイプにも注目していますが、入試タイプは学校側が導入しやすい適性検査型入試が増える傾向にありますが、ただこれからは小学校で必修化された英語とプログラミングの影響で、英語入試とプログラミング型入試が増えてくることは確実だと思います。
入試に対するコロナの影響は?
市川氏:昨年は学校の説明会がほとんどオンラインになってしまい、新タイプ入試を知ってもらうのにどの学校も苦労していらっしゃいました。中でもグループワーク型入試は実際に体験することで受験意欲がわくので、体験機会を与えられなかったのは少し物足りなかったようです。しかしオンラインを使って一人ひとりの子と丁寧に連絡をとった学校は、確実に受験生を確保し、入学率も驚くほど高かったといいます。一人ひとりの子と試験前に向き合う時間は、受験生に自己肯定感と好感度を与えたのではないでしょうか。
今後、学校は新タイプ入試にどう取り組んでいくのでしょうか?
鈴木氏:学校は今まで出会えなかった子どもと出会え、子どもは今まで出会えなかった学校と 出会えるのが新タイプ入試です。その幸福な出会いのためにも、入試は入学後の学びにつながった試験を用意することが大切ではないでしょうか。入学してから生徒に「あれ?なんか違う」と思われない教育と学びの環境 をつくることがポイントです。かといって結びつけられる学びがないから新タイプ入試ができないわけではありません。学びは学びの主人公である生徒をサポートしながらつくっていけばいいと思います。それが次につながってその学校の特徴になっていく。そういうものではないでしょうか。
新タイプ入試に塾はどう対応していけばいいのでしょうか?
市川氏:多種多様な試験が生まれているので、塾がすべてに対応することは難しいと思います。ただ新しい価値観を知っておくことは急務ではないでしょうか。というのも、学校は、教科型の試験で花開く子もいれば、新タイプ入試で花開く子もいることを、実感とともに知っていますし、受験生の親世代も敏感に感じ始めているからです。“ 探究”を教える新しいタイプの塾が人気を博しているのは事実であり、受験塾も新しい価値観、学力観に、これまで以上に柔軟に対応していくことが求められているのではないかと思います。
本日はありがとうございました。次回からは新タイプ入試 それぞれについてのお話をお聞かせください。
※写真撮影時のみマスクを外していただきました。