平成20年(2008年)に校名を変更。同時に中学校が共学化し、進学型・普通科専一校の実現に向けて大きく舵を切った日本工業大学駒場中学校。通称、日駒。以来14年で有名大学への合格実績も確実に伸び、取り組みの成果が現れつつあります。そんな日駒では近年、中学受験の門戸をさらに広げる一助として「得意を活かした入試」への取り組みを開始しました。プレゼンテーション型入試は、その一環として今年始まったばかりの新しい入試です。プレゼンテーション型入試とは、いったいどんな入試なのか?入試広報部主任の堀口先生と、実際に昨年度プレゼンテーション型入試を受験した中学1年生のお二人に話を伺いました。
プレゼンテーション型入試は、どんな試験ですか?
「『朗読への感想』と『プレゼンテーション』の2つで構成される入試です。自己アピール型入試と異なる点は、教科試験がないことです。前半で行う『朗読への感想』では、詩や小説、随筆などのおよそ5分間の朗読を聞いて、そのとき心に浮かんだことを45分間で400~600字にまとめてもらいます。読書感想文のようなイメージです。後半の『プレゼンテーション』では、本校が事前に提示した3つのテーマ(※)から1つを選び、入試当日までに資料を作成してきてもらいます。当日は、その資料を会場の黒板に貼って、それを示しながら試験担当の教員2名に自分の意見をプレゼンテーション(発表)してもらいます。プレゼンテーションが終わったら、発表内容について 教員が質問をしますので、受験生はそれに答えてください。資料は、A4サイズ以上の用紙を用いて手書きで作成することが条件です。枚数は問いません。所要時間は、発表5分、質疑応答5分です」
※令和5年度のテーマは「自分の名前の由来」、「好きなペットのこと」、「私が実行しているSDGs」の3つです。
採点は?評価のポイントは、どこにありますか?
「得点は『朗読への感想』100点、『プレゼンテーション』100点で、計200点満点となります。プレゼンテーション型入試で私たちが見たいのは、教科型の入試では測れない受験生のみなさんが持っている潜在的な能力です」
話すことや伝えること、表現することが得意だったり好きだったりするお子さんには「ぜひ挑戦していただきたい」とのこと。中学受験を決意するのが遅くなり教科型入試の対策に出遅れてしまったお子さんにも、チャレンジしがいのある入試といえるのではないでしょうか。
プレゼンテーションと聞くと、少し難しそうに感じるのですが?
「本校のプレゼンテーション型入試は、言ってみれば『自分の考えていることを表現してみよう入試』のようなものです。難しく考える必要はありません。『自分はこう思いました』、『こう考えています』など、自分が考えていることを相手にきちんと伝わる文字や言葉にできれば、大丈夫です。プレゼンテーションの資料作成について条件を少なくしているのも、一人ひとりの個性を発揮しやすくするためです。大きな紙1枚にまとめてもいいですし、何枚かに分けても構いません。文字だけでも、絵や写真をたくさん使ってもOKです。あなたらしい発表を聞かせてください」
資料は、必ず手書きで作らなくてはなりません。少々アナログなようですが、受験生の人柄をより引き出すための工夫のひとつです。もちろん、大人の手が介在するのを防ぐ狙いもあります。
入学後は、どんな学校生活が待っていますか?
「プレゼンテーション型入試で入学した生徒は、やはり自己表現が得意だと思いますので、ぜひそうした力を活かして学校生活でもさまざまな場面で活躍してほしいと思っています。人前で話すとか、コミュニケーション能力を求められるところでリーダーシップを発揮するとか。そうやって6年間で本来の力を伸ばしていくことで、大学入試では総合型選抜も視野に入ってくることでしょう。自分の武器を分かっていて、それで勝ち抜いていく姿勢は、大学入試に限らず社会に出てからの進路にも繋がっていくはずです。そうした意味で、プレゼンテーション型入試で入学する生徒に、私たちも大いに期待しています」
得意を伸ばすためのサポートは、ありますか?
「例えば、本校独自の家庭学習ノート『ファイトノート』も、得意を伸ばす取り組みのひとつです。ノートを通じて生徒の得意なこと不得意なことを教員が把握して、それを保護者の方と共有しています。家庭と一緒になって指導していくことで、得意をさらに伸ばしていきます。本校では、個性や能力を含めた『人柄』と学力は両輪と考えています。学力を伸ばすことも大事ですが、何よりも人生の土台となる自らの人柄を育んで欲しいという校風です。こうした言葉にするのが難しい独特の風土を近年『日駒トリニティ』という形で視覚化しました」
来年受験を考えている受験生や保護者へのメッセージをお願いします。
「中学受験を考えている皆さん。あなたの得意を入試に活かしてみませんか?本校には、皆さんの得意を伸ばし育む風土があります。一人ひとりが持っている大事な芽をしっかり花咲かせられるように、学校全体でサポートしていきます。本校で自分の得意を活かして、学校生活をぞんぶんに楽しんでいただければ嬉しいです」
教えて!学校のこと 試験のこと
Q. 本校を受けてみようと思ったきっかけは?
「学校説明会に何度も参加して、自分の苦手だった勉強や部活を楽しんでできる学校だと感じたからです。それに、屋上でご飯が食べられたりして、楽しい学校生活を送れそうだと思いました」A.N.さん
「ひとつは校長先生の言葉です。『本校が第一志望じゃない人もいるかもしれないけれど、自分に合った学校に入ってください』とおっしゃっていたのが印象的でした。図書館も規模が大きいし、勉強もちゃんとしてそうでした」E.F.さん
Q. プレゼンテーション型入試を選んだのは、どうしてですか?
「自分は小学校の時からプレゼンをしたり資料を作ったりするのが得意だったので、この入試を選びました」A.N.さん
「普通の入試と違って試験で発表したりするのが新鮮で面白そうで、自分に向いているなと思いました」E.F.さん
Q. プレゼンテーション型入試のために何か準備をしましたか?
「朗読は、塾で問題集を読んで自分の体験を交えて書く練習をしました。プレゼンについては最初に台本と資料を作り、1月初め頃から塾と家で毎日1回ずつ繰り返し練習して、意見を聞きながら修正していきました」A.N.さん
「今年に入ってすぐ、1月から資料を作り始めました。発表原稿は作らずに、毎回、資料を示しながら話すようにしていました。練習は、両親を相手に週に1~2回ぐらい定期的に行いました。時間を計ってもらいながら練習しましたが、両親からは話す速さや声の大きさなども注意されました」E.F.さん
Q. プレゼンテーションで工夫したところは?
「まず資料は文字だけでは伝わりにくいと思ったので、絵や写真を使うなどの工夫をしました。何度も作り直したので、完成まで2か月近くかかりました。また、資料はB4の紙をつなぎ合わせたものを何枚か作ったのですが、黒板での貼り換えを早くスムーズに行う練習も行いました」A.N.さん
「資料は大きな模造紙1枚にまとめましたが、最初にどこに何を書くかを決めて、それから写真や絵、文字などを入れていきました。絵を描くのは苦手ですが、絵があった方が分かりやすいと思ったので、頑張りました」E.F.さん
Q. 実際に入試を受けてみての感想は?
「緊張しましたが、何度も練習していたので自分の思っていることをしっかり伝えることができました。原稿は手に持っていましたが、覚えていたので一度も見ていません。先生の顔を見ながら発表できました」A.N.さん
「新しい入試なので最初は『できるかな?』という不安もあったのですが、試験自体は、すごく楽しかったです。また、試験官の先生も、とてもやさしかったです」E.F.さん
Q. 学校生活は、どうですか?
「入学前に想像していた通りの楽しい学校生活が送れています。部活にも励んでいて、勉強と両立できています」A.N.さん
「友達がいっぱいできました。朝テストで勉強の習慣が付き、モチベーションが高く保たれています」E.F.さん
Q. プレゼンテーション型入試でのアドバイスは?
「相手に分かりやすく伝えることを意識してプレゼンすることが、大切です。そこさえ押さえておけば、大丈夫です」A.N.さん
「両親でなくてもいいので、誰かに聞いてもらう練習をしたほうがいいです。自分は、少し練習不足でした。練習しておけば、緊張せずに相手の目を見て話すことができると思います」E.F.さん
- 取材Memo
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生徒に大人気、芝生が広がる屋上庭園
「スマートビル」と呼ばれる日駒の校舎は、その名の通りのとても近代的な建物です。4階吹き抜けの開放的なエントランスや、3万冊の蔵書を誇りコーヒーを飲みながら読書が楽しめる図書館、300席超の収納式座席を有する百周年記念ホールなど、校舎には学校生活を豊かにする多彩な施設が設けられています。なかでも生徒に人気なのは、屋上庭園。青空の下、芝生が広がる庭園で友達と一緒に食べるお弁当は、さぞかし美味しいでしょうね。