トライ&エラーから、非認知能力を発掘する「プログラミング入試」を行う相模女子大学中学部・高等部

プログラミング入試

小田急線相模大野駅から徒歩約10分。相模女子大学中学部・高等部は、幼稚部から大学院までが、東京ドーム4つ分もの広大なワンキャンパス内に点在する総合学園の中・高等部です。幼稚部ボランティア、高大連携による食育講座など、総合学園のメリットを活かして、学校種の枠を超えた交流や連携プログラムを推進。学業だけではないさまざまな体験を通して、これからの社会を生きていくうえで欠かせない発想力や思いやりの心を持つ人材の育成に取り組んでいます。

中学部では、従来型の教科型入試(2科または4科)に加え、「適性検査型入試」と「プログラミング入試」を導入しています。今回は、2019年から行われている「プログラミング入試」について、中学部校長の中間先生にお聞きしました。

中学部校長 中間 義之 先生
手にしているのは、学園キャラクターの「さがっぱ・ジョー」
■2026年度「プログラミング入試」募集要項
●試験日程:2026年2月1日午前・2月5日午前
●試験科目:授業・プログラミング(80分)、発表・ディスカッション(約20分)、
      基礎計算力テスト(20分)

プログラミング入試を導入したきっかけを教えてください

「相模女子大学小学部では、2017年度から全国に先がけて、人型ロボットPepper等を活用したプログラミング教育をスタートし、中学部でもプログラミングを導入しました。プログラミングの授業では、失敗から学ぶ姿勢や試行錯誤する姿勢、自由な発想が、教科の学習より顕著に現れると感じました。問題発見やその解決、答えのない課題に取り組むことで生まれる想像力や創造力、やり抜く力などは、従来型のテストだけでは把握しづらい『非認知能力』と呼ばれ、相模女子の教育においてはずっと大切にされてきた力です。プログラミングを通してこれらの力を見ることができるならばと、2019年から非認知能力にスポットをあてた『プログラミング入試』を導入することにしたのです」

プログラミング入試の具体的な内容について伺いました。
「課題は、車型ロボットを、各自が組んだプログラムによって移動させるものです。まずiPadとロボットのBluetooth接続方法や、ロボットの動かし方についての導入授業が約30分行われます。
授業を終えると50分間のプログラミング実習です。実習では受験生一人ひとりが実際にロボットを動かして、ゴールまで移動させるわけですが、プログラムがうまく組まれていないと、ロボットは思うように動いてくれません。そのうえ途中に障害物もありますから、簡単にはゴールにたどり着かないのです。受験生たちは、失敗するたびに試行錯誤を繰り返し、何とかゴールできるよう頑張ります。
プログラミング実習終了後は、数人のグループに分かれて、自分が作ったプログラムや工夫点などについて、1名約5分間のプレゼンテーションを行います。自分のグループがプレゼンを行っていない間には、20分間の基礎計算テストが行われます」

評価はどのように行われるのでしょうか?

「アドミッションポリシー(本校が求める生徒像)に基づいて作成されたルーブリックを用いて評価を行います。判断基準となる観点は多岐に渡りますが、私たちがもっとも大切にしているのは、『最後まで諦めずに取り組む姿勢』です。課題をクリアできない(ゴールできない)=不合格とは限りません。ペーパーテストと異なり、答えがないものを課題にしていますので、どうすれば合格できるのかと問われると答えるのが難しいのですが、なかには、私たちが想定していなかったような発想で課題をクリアしようとする受験生もいて、私たちもとても勉強になるんです。2022年度入試以降は、毎年プログラミング入試に合格した生徒全員が中学部に入学しています」

受験にあたり、プログラミングの知識はどの程度必要になるのでしょうか?

「プログラミング入試という名称から、専門知識がないと難しいというイメージを持たれがちなのですが、私たちが大切にしているのは、受験生一人ひとりの『トライ&エラー』や『チャレンジ精神』です。本校のプログラミング入試は、将来のプログラマーを発掘するための試験ではなく、非認知能力を探り、伸ばすための芽を見つける試験。実際、受験者のほとんどがプログラミング関連の塾などに通ったことなどはなく、試験内容が楽しそう、と興味を持ったことによって受験しています。試験中も、プログラミング実習に関して教員は一切助けませんが、それ以前の設定などがうまくいかない場合は当然サポートします。つまり、挑戦してみたい、と思えば気軽な気持ちで臨むことができる入試スタイルなのです。入試の課題は毎年変わりますが、基本的なコンセプトは変わりません」

入学後、生徒はどう伸びていますか?

中学部のプログラミング授業

「入学後は、受験した入試のタイプに関係なく、同じクラスで学びます。塾に通って教科型入試で入学した生徒との学力差を心配する親御さんもいらっしゃいますが、気になるほどの差は感じません。プログラミング入試を導入して7年。この入試で入学した生徒は、もともと非認知能力に長けているので、勉強以外のことにも積極的に挑戦する子が多いですね。
本校のプログラミング入試で問われる非認知能力は、学びはもちろん、生活、仕事すべてに欠かせない力です。だからこそプログラミング入試で大切にされる力は、スタイルが多様化している大学入試やその後の大学生活、社会人になってからより大きく花開くのではないでしょうか。大学入試に関しても、プログラミング入試で入学した生徒たちは、自分に合う進路や入試スタイルを自ら見つけ、挑戦し、それぞれの進路に進んでいます。これから生徒たちがどのように成長していくかを、私たちもとても楽しみにしています」

プログラミング入試で入学した生徒の声

プログラミング入試で中学部に入学した生徒さん2名が、受験のきっかけ、入試の感想、入学後の学校生活などについて語ってくれました。

Oさん(中学部3年)

相模女子を志望したきっかけを教えてください。

小さい頃からバスケットボールをやっていました。中学以降もクラブチームに所属して続けることも考えましたが、強豪校として有名な相模女子でバスケットボールをやりたいと思ったんです。

中学受験のために塾には通いましたか?

5年の終わりごろから教科型入試対応をするための塾に通っていました。6年になってから相模女子にはプログラミング入試があることを知り、体験会に参加してみると、すごく楽しかったんです。教科型の勉強で塾に通うと、バスケットボールとの両立が大変だったので、塾はやめて相模女子のプログラミング入試1本に絞ることを決めました。

プログラミング型入試の対策はどのように行いましたか?

6年生を対象に行われる入試体験会に何度も参加しました。回を重ねるごとにできることが増えていくのが嬉しくて、楽しみながら参加しました。入試前にしっかり授業(レクチャー)を聞くことが大切だということがわかったので、きちんと話を聞くことを心がけました。また、計算問題練習もやりました。おかげで入試当日も落ち着いて試験を受けることができました。

プログラミング入試のいいところを教えてください。

教科型だと、間違えると減点になりますが、プログラミング入試は、失敗してもそこからどうすればよいかを試行錯誤しながら進めていくことができます。試験中、何度も挑戦できることが、私には合っていると思いました。

体験会や説明会で印象に残っていることはありますか?

校長先生が「非認知能力」について話をしてくれたことです。聞き慣れない言葉でしたが、とてもわかりやすくて、私も「非認知能力」を身に付けたい!と思いました。

プログラミング入試の経験は、入学後どのようなことに役立っていますか?

ただロボットなどを動かすのではなく、なぜ、どうすればいのか、ということを考えられる思考力は、どの教科にも役立っていると思います。

相模女子の魅力を教えてください。

勉強面では、S-Sタイムという自習時間があり、自分のやりたいことに使えます。私はこの時間を宿題や予習・復習の時間に充てています。部活動と勉強の両立は大変ですが、S-Sタイムを活用することで、勉強はほとんど学校にいる間に終わらせることができています。
また、1学年3クラスについている6人の担任の先生が、全クラスの担任としていろいろな相談に乗ってくれます。

Yさん(中学部3年)

中学受験をしようと思ったきっかけを教えてください。

兄も中学受験をして私立の男子校に通っていました。楽しそうな兄の姿を見ていて、私も受験しようかなと思ったんです。小5から塾に通い始め、ホームページを見て気になったいくつかの学校に見学に行きました。相模女子もそのひとつです。

相模女子の印象はいかがでしたか?

正門を入った瞬間から自然いっぱいの空間が広がり、すてきだなと思いました。また、同じ敷地内に幼稚部もあって、小さな子どもたちの姿があるのもいいなと思いました。

プログラミング入試に挑戦しようと思ったのは?

説明会で話を聞いておもしろそうだと思いました。それから、校長先生から聞いた「非認知能力」の話も印象的で、この学校に入ったら、そうした力が身に付くのではないか、と思いました。

プログラミング入試への対策はどのように行いましたか?

入試体験会に3回ほど参加しました。プレゼンテーション対策は、家で練習して母にアドバイスをもらったりしました。

プログラミング入試を受けてみていかがでしたか?

緊張しましたが、入試体験会に何度か参加していたり、プレゼンの練習をしていたことがとても役立ちました。計算問題は、塾で何度も練習していたのでスムーズにできたと思います。

プログラミング入試の経験は、入学後どのようなことに役立っていますか?

入試を通して、相手にものごとを伝える力、自分の考えを持つことの大切さがわかったので、授業に限らず、学校生活全般に役立っています。

相模女子でよかった、と思うことを教えてください。

女子校なので自分の素で過ごすことができています。また、先生方が生徒一人ひとりのことをよく把握していてくださいます。私は吹奏楽部に所属していて、中2の終わりに「部長になってみない?」と先生に勧められました。部長なんて務まらないと最初は悩みましたが、思い切ってやってみてよかったです。今思えば、先生が、引っ込み思案だった私の背中を押してくださったのだと思います。

校長先生から受験生へのメッセージ

「相模女子は、答えのない見えない未来を生きる生徒たちにとって、どのような力が必要かを考え、新しい取り組みにチャレンジする学校です。教わる学びから、見つける学びへ。『なぜ?』をたくさん見つけ、考える楽しさを体感しながら学んでほしいと思っています。相模女子は今もなお進化し続けています。気になったら、学校を訪れてみてください。
プログラミング入試に関しては、4~6年生を対象とした「プログラミング体験会」と、6年生を対象とした「プログラミング入試体験会」を実施しています。「プログラミング入試体験会」は、入試直前の年明けまで実施しておりますので、興味がある方はぜひ一度ご参加ください」

2025年「プログラミング入試体験会」(6年生対象 要予約)
11月15日(土)・12月13日(土)・1月10日(土)
取材Memo

多彩な学園プログラムを推進
幼稚部(認定こども園)から大学院までが一つのキャンパス内にある相模女子では、総合学園としてのメリットを生かして、預かり保育のお手伝いや、管理栄養学科の大学生から学ぶ和食のいろは、大学の講義を体験する高大連携講座など、多彩な学園プログラムが推進されています。
定員は1学年約120人ですが、すべての入試において合格ラインの基準を設けているので、実入学者は毎年90人弱。1学年を3クラスに分け、少人数制ならではのきめ細かい指導を行っています。今後も非認知能力を育む「しかけ」を、授業や学校生活のなかにたくさん取り入れながら行っていくとのこと。何よりも、伸び伸びと学校生活を楽しむ生徒たちの姿が印象的でした。