同校の建学の精神は「学芸を修めて人類のために〜Arts for Humankind」、校訓は「恥を知れ」(自分に向けた言葉)。そして、スクールモットーは「地球市民の育成」です。1割強の生徒が帰国生ですが、一般生と帰国生をクラス分けすることなく、共に学び合うことを大切にする教育体制を整えてから、四半世紀もの時が経ちました。そして、そこでは人と違うことを恐れずに、日々、新たな価値観と出会い、新たな気づきを得る学校生活が営まれています。このように、伝統的にグローバル教育を実践する同校で、先生方が思い描くのは生徒たちが地球市民として生き、志を持って活躍する姿です。今回は、その教育を象徴する「グローバル入試」についてご紹介します。GLC(Global Leaders Course)の中2のお二人、M・KさんとM・Yさんにお話を伺いました。
多様な個性が共鳴し合う中で、自分の将来への「気づき」が得られる学校生活が待っています

大妻中野「グローバル入試」の入試要項
日程●第1回:2026年2月1日(日)午前
第2回:2026年2月3日(火)午前
第3回:2026年2月4日(水)午前
科目●国語・算数(各100点/50分)
英語スピーキングテスト(約10分/受験生1人に対し試験官2人)
募集●「帰国生入試」と合わせて約36名
国・算の筆記試験は同日の「アドバンスト入試」と同じ問題です。
また、英検準2級相当以上を取得している受験生には、筆記試験に代えて保護者同伴面接試験(日本語と英語)を実施しています。
まず最初に、「グローバル入試」をなぜ受けようと思われたのか、そこから教えてください。
M・Kさん「私は1歳の頃から英語に親しんでいて、DVDの教材で英語の歌を聴いたり歌ったりしていました。勉強というより、遊びながら英語を身につけさせたいと両親が考えていたんだと思います。小学校の時は塾に通いながらも、英語は好きだったので英検の勉強はして、小4で英検準2級を取りました。そして、大妻中野の文化祭を見学に来た時、GLCのクラスの様子を見たらとても楽しそうだったので、11月に『グローバル入試』の入試体験を受けたんです。受ける前は自分の英語力に自信はありませんでしたが、思った以上に自分の言いたいことを伝えることができたので、受験してみようと思いました」
M・Yさん「私は幼稚園の時にドイツに3年間住んでいたので、インターナショナルスクールの幼稚園に通っていました。帰国してからは、週に1回『海外子女教育振興財団』の外国語保持教室に参加したり好きな英語のアニメを見たりして、できるだけ英語を忘れないようにしていました。英語は好きな教科だったので、もっと伸ばしたい、話したいと、GLCに入ることができるグローバル入試を受験しました。英検は、小4で3級、今年中2で2級を取得しました」
お二人のお話は、いきなりレベルが高い感じですが(笑)、この入試に向けて、どのような準備をされましたか?
M・Kさん「英語スピーキングテストの準備としては、面接で聞かれそうなこと、例えば『入学したら何をしたいか』とか、そういうのをちゃんと英語で話せるように、両親に協力してもらいながら練習しました。本番の面接は緊張していたのであまり覚えていないのですが、そのことを聞かれて『私は人見知りなのですが、たくさん友達をつくりたい』と言った覚えがあります(笑)。グローバル入試を受けようと思ったのは11月以降だったので、それまでは塾で4教科の受験勉強をしていました。ですから、国・算の筆記試験については過去問を解いて問題傾向をつかみながら勉強しました」
M・Yさん「私は筆記試験と英語スピーキングテストではなく、保護者同伴面接だけでした。面接に向けた準備は特にしませんでしたが、小学生の時、ずっと『朝日小学生新聞』を読んでいたことは良かったなと思っています。面接で話したことで覚えているのは、当時、能登半島地震が大きなニュースになっていたので、暖かい洋服を送るボランティアのように、自分でも何か貢献できることがあるのではないかという話をしました」
「英語スピーキングテスト」のサンプル動画はコチラ
→https://www.youtube.com/watch?v=RevNB6EIJeE
「英語スピーキングテスト」は、入退室を含めて受験生1人につき約10分で行います。受験生1名に対して試験官は2名。内容は、以下の3つのカテゴリーを中心に構成されます。
❶Icebreaking(名前の確認と短い質問)
❷Questions Type-A(自分に関する基本的な質問)
❸Questions Type-B(身近な話題に関する質問)
今、お二人ともGLCに所属されていますが、GLCの雰囲気はどんな感じなのか、具体的に教えてください。

M・Kさん「文化祭は、各クラスが夏休み前からやりたいことの企画書を書いてゼロから創り上げるんですが、受験前に行った時にGLCの当時の中1のクラスを見て、先輩たちが学校生活をすごく楽しんでいるなと感じたんです。実は、私は『女子校はあんまり……』と思っていたんですが、大妻中野ならと(笑)。私は生まれも育ちも日本ですが、GLCには帰国生が多く、いろいろなバックグラウンドを持つ人がいます。最初はうまく溶け込めるか不安でしたが、そんな壁はなく、『みんな違う』ことを認め合っていて、和気藹々とした雰囲気です」
M・Yさん「私は文化祭ではGLCの中3の教室に行って展示を見たんですが、みんなで協力し合って、仲が良い感じがすごく伝わってきました。海外で生活していた人が多いので、この学校に入っていろいろな国の話を聞きたいなと思いました」
大妻中野の「GLC(Global Leaders Course)」とは?
同校は「アドバンストコース」「グローバルリーダズコース(以下GLC)」の2コース制をとっています。
アドバンストコースの教育目的は「より高い目標にチャレンジする精神と学力の育成」。帰国生入試とグローバル入試に合格した生徒で構成されるGLCの教育目的は「国境を越えて異文化に親しんだ経験を持つ生徒と、国内で学んだ日本のこころを持つ生徒が溶け合い、互いの『当たり前』のギャップが起こす化学変化で、広い世界へ飛び出す意欲に火を灯す」ことです。
GLCは同校の教育活動の先導的役割を果たし、最終的には全校生徒が建学の精神「学芸を修めて人類のために」を国際社会で活かす力を獲得することを目指します。中3進級時以降は毎年コース変更が可能ですが、どの学年も中3のGLCは2クラス、アドバンストコースは4〜5クラスとなっています。
以下は、GLCでの中学の学びを抜粋したものです。
❶英語は週6時間 ネイティブの先生が4時間、日本人の先生が2時間。
❷フランス語も必修 中学は週1時間、高校は2時間。高2からは選択制に。
❸数学は習熟度別授業(中2まで) 海外と日本では進度が異なることが多いため。
❹海外研修・留学制度が多数 中2では毎年100名以上が参加する「カナダセミナー」を実施。これは30年以上の歴史があるプログラムで、GLCの生徒は英語でフランス語を学ぶバイリンガルプログラムに参加する。
❺グローバルネットワークプログラムが豊富 SGH(スーパーグローバルハイスクール)ネットワーク校から昨年、文部科学省が推進するWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業の拠点校に採択された同校は、大学(法政大学[GIS]・テンプル大学[日本キャンパス]・順天堂大学・津田塾大学・玉川大学など)や提携企業と協働し、講演だけでなく、海外・国内でのフィールドワークやアクティビティなどを中心とする体験プログラムを実施。また、ユネスコスクールとしてユネスコの理念を理解、普及させる取り組みも豊富。
もともと英語が得意なお二人ですが、GLCでの英語の授業の様子はいかがですか?
M・Kさん「GLCでは、英語の授業は習熟度別でαとβの2クラスに分かれますが、私はβクラスです。私はもともとリーディングが苦手でした。でも、ネイティブの先生が使う教科書には英語がたくさん並んでいて(笑)、中1の時は難しくて授業についていけるか不安でしたが、今は慣れてきたのでテストでも高い点数が取れるようになりました」
M・Yさん「私もβクラスです。日本人の先生とネイティブの先生の授業があり、ネイティブの先生の授業では学期に1回くらいプレゼンテーションを行うんですが、発表スライドを作って、身振り手振りを加えてみんなの前で発表します。だから普段でも、クラスのみんなが自分の意見を言いやすい雰囲気ができているなと思います」

M・Kさん「プレゼンテーションの時は聞いている人の方を見て話すとか、ジェスチャーを交えるとより伝わりやすいとか、先生がさまざまにアドバイスしてくれますし、そこでスライドの作り方も学ぶことができます。あと英検に関しては、内容が難しくなりますが、中学卒業までに準1級を目指したいと思っています」
M・Yさん「私も準1級に受かりたいですけど、2級と準1級では単語数の量が全然違うので、単語を確実に覚えていきたいと思っています。ですから、今は登校中に『勝つ単』で1日に単語10個を覚えて、下校中にもう1回復習するようにしています」
M・Kさん「私は『でる順パス単』を買いました。英検前は毎日絶対にやることを習慣化しています。特に英検を受ける予定のない時は学校の授業とか、あと英語の塾にも行っているので、その宿題をやったりしています」
今、自分がやりたいことがわからなくても、大妻中野なら、きっと見つかります!
英語の学習は、引き続き邁進中ですね。ところで、ほかに好きな教科はありますか?
M・Yさん「小学生の時から理科がすごく好きで、最近は『回路の仕組み』や『光の進み方』、『細胞』とか、学ぶほどに楽しいです。あと、実験で予想が当たった時とかは『やったぁ!』と良い気持ちになって(笑)、もっと勉強したいと思うようになりました」
M・Kさん「週に1回、フランス語の授業があるんですけど、すごくおもしろいです。フランス語の単語は英語と似ているので、日本語で学ぶというよりも、英語がわかっている状態でフランス語をやると、発音とかアクセントの違いとかもわかっておもしろいなと。あとは、歴史も好きです。時代によって文化の有り様や、政治の仕方が違ったりするのが興味深いですね。『大河ドラマ』も必ず見ています(笑)」
では、部活動について教えてください。

M・Kさん「私はバスケ部に入っています。活動は週に4日で、日曜日には練習試合とか大会にたまに参加したり。去年は連続して右手の人差し指を2回突き指してしまい、思うように練習ができなかったので、今はとにかく上手くなれるように頑張っています」

M・Yさん「スキー部です。冬は志賀高原に合宿に行って、初心者・中級者・上級者の3グループに分かれて練習しますが、私は初めてだったので初心者コースでした。楽しかったです(笑)。オフシーズンはインラインスケートをしたりして、バランス力を鍛えています」
お二人とも運動部なんですね。まさに、「文武両道」(笑)!
M・Kさん「受験期にはやっていませんでしたが、小学校低学年の時から、陸上や体操、水泳も習っていました」
M・Yさん「私も小学校の時は水泳教室に通っていたんですけど、学校のクラブ活動としては科学部で活動していました」
M・Kさん「あと、今も続けていますが、小1から書道も習っていて、この間は『江戸書道展』というわりと大きな大会で入賞することができました」
M・Yさん「私は文化系はあまりやっていないんですが、中学に入ってからは読書がけっこう好きになりました。2歳上の姉が本好きで、姉の勧めで読むようになり、家で時間がある時は『ツナグ』などの小説を読んでいます」
M・Kさん「私も本は好きで(笑)、友達に勧められたものを読んだりしています」
興味・関心が幅広いですね(笑)。では、たくさんあるとは思うのですが、お二人にとっての「大妻中野の一番の魅力」を教えてください。
M・Yさん「先生です。私は理科系に興味があるので、『こういうのをやってみたらどう?』とか声をかけてくださるんですが、そのおかげでいろいろな体験ができていると思います。英語の先生も声をかけてくださり、去年は高大連携をしているテンプル大学を訪ねて、キャンパスを学生の方々と一緒に見て歩くことができました。先生方は一人ひとりの希望を知っていて、寄り添ってくださいます」
M・Kさん「私は帰国生ではありませんが、周りにはさまざまな国に在住していた友達がたくさんいます。ですから私は英語を教えてもらい、一方で、日本の教育で勉強してきた国語とか理科、社会などで私がわかることを教える。そんなふうに、お互いが得意なことを教え合える環境であることがとても魅力的だと思います」
充実した学校生活を送られていますね。では、今思い描く自分の未来像を教えていただけますか?
M・Yさん「大学では物理学部に入りたいと思っているんですが、その後は大妻中野中学校の理科の先生になりたいです。でも、英語も得意なので、できれば海外の学校で教える経験をしてから(笑)」
M・Kさん「まだ、あまりはっきりしていませんが、英語を使った仕事をしたいと思っています。特に日本の魅力を外国人観光客の方に伝えることができたらと、今年の夏には東京都が主催するボランティア活動『おもてなし親善大使』に参加してみました。実際におもてなしについて学ぶことができましたし、都庁にいらしていた観光客の方とお話しできたのが楽しかったです」
頼もしい(笑)。お二人の将来が楽しみですね。では最後に、後輩受験生にメッセージをお願いします。
M・Yさん「グローバル入試は、英語が好きな人やフランス語を学びたいと思っている人にはお勧めの入試だと思います。あとは、たとえ今やりたいことがわからなくても、大妻中野なら先生方が情報やさまざまな選択肢を与えてくださるので、少しでも興味があったら悩まずに挑戦してください」
M・Kさん「私も同じで、英語が好きな人、フランス語に興味がある人に向いている入試だと思います。私も6年生の時は、自分が思うように英語をスラスラ喋れるタイプではなかったし、自信もあまりなかったけれど、諦めたりせずに受けてみる、チャレンジしてみることが大事だと思います」

- 取材Memo
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たくさんの刺激と共感の中で、自分自身と、自分が望む道筋が見えてくる学校です
過ごしてきた環境によって「当たり前」は違ってきます。その現実に、そこ此処でぶつかりながら、でも、だからこそ人は視界を広げていくことができる。お話を伺ったお二人が、そんな校内に満ちる刺激にワクワクドキドキしながらも、楽しんでいる様子が頼もしく思えました。ただ、それは一般生と帰国生というバックグラウンドの違いによるものだけではありません。そこには、「教育は待たせない」という教育哲学の下、同校が用意する多様なプログラムとの出会いがあるのです。そんな学びの環境を整えているのが、大妻中野の最大の魅力と言えるでしょう。留学する生徒も多い同校ですが、その半数以上が内外に開かれた教育体制と、身近にいる帰国生に触発された一般生というのも同校ならでは。お二人はまだ中学2年生です。これから経験するであろうさまざまな出会いや葛藤を経て、今心に抱いている志は変わっていくかもしれません。でも、大妻中野での6年間で得た種がどのように発芽していくのか、とても楽しみに思える今回の取材でした。

世界各国に姉妹校や留学提携校など広範なネットワークを有する同校は、
コロナ禍にあっても、十全な調査と相手国との情報交換を密に行い、
留学をストップすることはありませんでした。
そこには「教育は待たせない」(生徒が本気で望むことは全力で後押しをする)、
「Beyond School」(主体的にチャレンジする機会を提供し続ける)といった、
同校の揺るがぬ教育哲学があります。
そして、どの場所でも主体的に動こうとする生徒たちを大きく支えるものに、
次の言葉があります。それは、校訓の「恥を知れ」。
強烈な言葉ですが、自分を高め、自分が自分の「良心」に対して
「恥ずるような行いをするな」という創立者・大妻コタカの言葉です。
日々の学校生活の中には、さまざまな葛藤と共感があります。
だからこそ、この言葉は生徒たちの心に深く深く刻み込まれ、
志を全うしようとする生徒たちが育っていくのです。