Q 「コース」のある学校、ない学校があるのはどうして?
志望校の中に「コース制」の学校、「コース制」のない学校があります。どう考えたらいいのでしょうか。
A わが子はどちらの方が伸びそうか
学校の基本的な姿勢の反映
志望校について考えるときに、知っておいた方がいいのが「コース制」の仕組みです。年々、「特進コース」「難関大学進学コース」といったコースを設置し、入学試験自体も「コース」別にする私立中学が増えています。学校がこのようなコースを設置する狙いは、一般コース(名称は「総合コース」などいろいろ)とは別枠の少人数の募集をすることで、偏差値表の高いところに校名が載るようにすることにあります。そうすることで学力が高い層に受験してもらおうという狙いです。
「特進コース」「難関大学進学コース」といったコースの入試の多くが、上位校と併願しやすい「午後入試」になっているのもそのためです。ですから、入試自体を分けている学校の場合では、当然「コース」によって入試の難しさに違いが生まれます。
わが子は「コース制」に合うだろうか?
「コース制」を選ぶか、「自然学級」(ふつうの学級編成)にしている学校を選ぶかは、家庭の教育観の根本に関わることなので、早めに両方のタイプの学校を訪ねるなどして、ご両親の考えをまとめておくことをお勧めします。
受験生の側からすると、こうした「コース」は名称からもわかるように、難関大学合格を第一義に考えているので、入学後に大学受験を強く意識したカリキュラムで授業が進められます。将来は、難関大学に進ませたいから、中学のうちからわが子に効率よく勉強させたいと、「コース制」を選ぶ家庭が増えているのです。また、高得点で合格すると特待生となって授業料免除などの特典が受けられる場合などもあり、その点に魅力を感じて受験する場合もあります。
ただ「コース制」とひとくちに言っても学校によって違いが大きく、入学後は授業時間数から教材・講習まで別という学校もあれば、名称だけで実質的にはほとんど差がないという学校もあります。受験するにあたってはその学校の「コース制」はどのようなシステムなのか、また中高6年間を上位コースの優秀な同級生たちと共に競い合っていく環境で、わが子が伸びるタイプかどうか、また子どもにハードなカリキュラムをこなすだけの覚悟があるかどうかを、見極める必要があるでしょう。
一方、学校は予備校ではないのだから、ホームルーム自体はあくまで自然学級であるべきだという考えの学校もあります。学力差といっても、教科によって得意・不得意があるのは当然で、それは教科ごとに習熟度別編成をすればいい、というやり方です。
ホームルームは多様な生徒がいてこそお互いに刺激し合えるという部分があるので、こうした姿勢も大切です。このように学級編成は、教育観にも関わる事柄なので十分に検討してください。
- プロフィール
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中学受験の専門家 安田 理 先生
東京都出身。早稲田大学卒業。大手出版社にて雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。日本経済新聞、朝日小学生新聞、「進学レーダー」、「サクセス15」、ベネッセ「高校合格言」、まなび倶楽部、WILLナビ、moveonlineなど各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。著書に、「中学受験 わが子をつぶす親、伸ばす親」(NHK出版)、「中学受験 ママへの『個別指導』」(学研)などがある。