2020年4月から、英語の授業が小学校3・4年生は必修化、5・6年生は教科化され、2014年には15校だった私立中学の英語入試の実施校は、2021年には143校にまで増加しました。
しかしながら一口に英語入試といっても、英語面接によるものや英語1教科で受験できるものもあれば、複数教科の中の選択肢として英語があるもの、英検などの英語資格を持っていると優遇措置があるものなど多種多彩です。そんな状況に対し英会話教室・スクールはどんな対応をしているのか、ECC総合教育研究所所長 太田 敦子さんにお聞きしました。
小学校ではじまった英語の教科化に対し、どんな取り組みをなさっていますか?
「去年からはじまった小学校の英語の教科書を見ますと、教科横断型の内容になっているものが非常に多いと思いました。特に東京書籍さんの教科書は、『CLIL(クリル)=Content and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)』の専門家にアドバイスを受けて作成しているようで大変興味深かったです。21世紀型教育は、単なる知識ではなく、自分の頭で考え課題を発見し、その解決法を見つけて行動に移していくことが重んじられます。
ECCでは2018年から小学校の新学習指導要領に向けた新シリーズ教材『Global View』をスタートさせました。その教材セットの中でも、注目すべきものがCLIL専用教材の『THINK AND TALK』です。このCLILを活用したレッスンでは、子どもの発達段階に合ったテーマやトピックを取り上げ、英語で学びながら21世紀の社会を生き抜くための力を養成しています」
『Global View』シリーズのテキストを使用したレッスンでは、どんなことが行われるのでしょうか?
「『英語を
学ぶ』のはCOURSEBOOKを使用します。ターゲットとなる表現や場面特有の定型文などを、楽しいキャラクターが登場する1年間のストーリーを通じて学習します。単語学習は、低学年ではPICTURE DICTIONARY、高学年ではWORDBOOKを使用します。そして『Global View』シリーズより新たに加わった『THINK AND TALK』というCLIL専用教材を使用して、『英語で
学ぶ』学習を行います。
CLILというのはContent and Language Integrated Learning=内容言語統合型学習という名の通り、教科などの内容と英語を同時に学んでいく学習法です。ECCでは、単語や表現など、英語の言語形式(Language)を学ぶことより、むしろその内容(Content)を優先して学習することを基本にしています。当然、扱う内容に応じて英語の単語や表現も難しいものが出てきますが、映像や写真、イラスト、そして日本語の助けも借りながら、与えられたトピックについて自ら考え、そして自分の意見を述べる活動を行います」
これからは英語力がますます重要になってくるのでしょうか?
「英語力といっても、これまでのような『英語の何を知っているか』『英語を正しく理解しているか』だけでなく、『英語を使って何ができるか』という点が評価のポイントになってくると思います。そのためには英語の『発信力』が非常に重要になってきます。これは、教科書に出てくる表現を単に覚えただけでは太刀打ちできません。自分の言いたいことを、今自分の持っている英語力を駆使して、何とか相手に伝える力が必要です。そのためには、できるだけ機会をとらえて、自分なりの英語を、勇気をもって、また大らかな気持ちをもってどんどん使ってみることだと思います」
これから英語が使えるUserになっていくための大事な点は?
「コミュニケーションは一人で行うものではなく、必ず相手がいます。その相手と言葉のキャッチボールを通して、お互いの考えや気持ちを伝え合うわけです。自分以外の他者とコミュニケーションを図る場合、たとえ、お互いの文化や風習が異なっていようとも、あるいは社会的な規範や価値観が異なっていようとも、相手のことを人間として尊重する気持ちをもたなければなりません。そして、異なった文化や風習を認め合い、言葉の壁を乗り越えて、お互いに理解し合うよう努力しなければなりません。それが『コミュニケーション』という相互共同作業における最も大切なポイントであり、英語Userとしてのはじめの一歩ではないでしょうか」
学んだ英語は、受験対策だけではもったいない?
「今の小学生は2100年まで生きる世代です。これまでの価値観や常識が世界的に通用しない時代を生きていきます。そんな世界規模で何が起こるかわからない社会を生きていくには、社会変化に対応できる資質や能力が求められます。その一つが多文化共生時代において対話する能力であり、国際共通語として最も多く使われている英語が使えることは必要不可欠になってくると思います。これからはコミュニティの隣人、会社の上司や部下、取引先などが英語話者であることも多くなってくることが予想され、英語は特定の職業だけに必要なものではなくなってきています。中学受験でこれから英語がどんどん取り入れられていくことは自明の理ですが、英語はこれからの21世紀を生きる人にとっては必要不可欠なスキルです。決して受験だけのものではないと思います」
1962年の創業以来、総合教育・生涯学習に取り組んでいるECCのコンセプトは「未来は、言葉で変わる。Language changes the future.」。受験対策で「英語を
学ぶ」のではなく「英語で
学ぶ」ことで切り拓かれる未来を大切にしてほしい。そんな思いをうかがい知ることができた取材でした。
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