50年以上も前に定期試験を廃止し、通知表はない。とはいえ、成績はきちんと示される。評価記号だけではなく、各教科の先生方からのコメントをもとに担任の先生が面談で伝達する。これが、同校の評価スタイルです。「Learning by doing(為すことによって学ぶ)」という教育哲学の下、教育目標を「結果ではなくプロセスを大切にする」「ことばの力を創造力に」とし、「論理的思考力」「発想力」「表現力」を涵養する同校。だからでしょう、この教育環境で過ごした卒業生たちには、桐朋女子での経験が「自分の基準」になっているため、大学でも社会に出てからも、周囲を巻き込みながら逞しく道を切り開いている人が多いのです。同校は、多様な資質に出会うためにさまざまな入試を設けていますが、その一つが英語1科型の「Creative English(以下、CE)入試」です。このCE入試と桐朋女子での学校生活について、中3のT.M.さんと高2のN.S.さん、そして外国語科の山本ちひろ先生に伺いました。
■英語の「アドバンストコース」に入りたくて、受験を決めました

お二人はなぜ「CE入試」を受けようと思われたのですか?まず、そこから教えてください。
N.S.さん「小学校に入るか入らないかくらいの頃から公文を中心に英語を勉強していたので、それを活かせるならという思いで受験を決めました。桐朋女子ではA入試(口頭試問・2科筆記試験)も受けたので、CE入試は併願する形でした。ただ、CE入試に合格すると入学後にアドバンストコース(※)に入れるということを聞いていたので、受験したいと思いました」
※アドバンストコース:身につけている英語力を発展的に伸ばす英語授業(中1〜高3で実施)。
授業は基本的に英語で行われ、少人数グループでのプレゼンテーションスキルなども学ぶ。
各学年で英検取得級を設定しているので、条件となる級を取得すれば、途中からでも
「アドバンストコース」の授業を受けることが可能。
T.M.さん「私は、単純に英語が好きだったのでチャレンジしてみたいと思いました。小さい頃から英語に触れる環境を両親がつくってくれていたのですが、先生が外国人の方でスピーキングがメインだったので、日本語で文法を学ぶ機会はあまりありませんでした。CE入試はスピーキングというより書いたりすることが多いのですが、自分が培ってきた力をその後に活かしていくためには、アドバンストコースに入ったほうがためになると考えて、私もA入試と併願してCE入試を受けました」
山本先生「アドバンストコースでは、ハイレベルな英語学習者向けの教材『New Treasure』を使用し、話したり書いたりする機会をたくさん設けています。このアドバンストコースに入るための基準は、中1(入学時)が3級、中2・3が準2級、高1・2が2級、高2のアドバンストプラスは準1級で、高3は高2からの継続受講となっています。このコースでは帰国生も一緒に学ぶので、英語を自然に使う環境が整っており、少人数でアットホームなので、互いに高め合う雰囲気があります。ディスカッションをしたり、プレゼンテーションをする機会も多く、英語が好きな人にお勧めのコースです」


CE入試は、英検3級相当以上の力を持っていることが前提となります。お二人にとっては高い壁ではなかったかもしれませんが、この入試に向けて、どのような準備をされましたか?
N.S.さん「私は、英語の基礎力をつける勉強を中心にしていました。CE入試ではライティングもあるので、書いたものを添削してもらったり、英検も受けました。ずいぶん前のことなので、あまりよく覚えていないのですが(笑)、小学生の時に3級か準2級を取得したと思います。桐朋女子に入学してアドバンストコースに入る条件が3級相当以上なので、少なくともそれは持っていなくてはと」
T.M.さん「私は、中学受験のための塾には通っていませんでした。でも、英検の勉強をするために2〜3カ月英会話スクールに通っていたことがあったので、そこで学んだことを入試に向けてコツコツと練習していた感じです。入試のレベル自体はだいたい3級くらいと言われていたので、準2級くらいを目指した勉強をしていたほうがいいと父と話して、毎日準2級の問題を少しずつ解いたり。それまで対面して話すという英会話しかしてこなかったので、ライティングに関しては父に教わりながら本番に向けて練習しました」
では、実際にCE入試を受けてみて、どんな印象を持たれましたか?
T.M.さん「ほとんど記憶がないくらい緊張しました(笑)。入試では、いくつか問題を解いてから面接を受けるんですけど、どちらかといえば面接のほうが楽しくて。書くよりも話したほうが先生と意見を交換できるので、とにかく自分の意志をきちんと伝えようと頑張りました。その時は、自分でイベントを企画するならどんなものをやりたいかというテーマだったんですが、小学校の時の先生から聞いた経験談をもとに、日本の伝統を伝えるお祭りを開きたいと提案しました。試験という感覚はなく、先生とおしゃべりしている感じがとても楽しかったです」
N.S.さん「私はT.M.さんとは対照的に、筆記試験のほうには難を感じなかったのですが、スピーキングにはかなり難しい部分がありました。面接では『休日には何をしますか』と聞かれたように記憶していますが、緊張して、思ったようにはいきませんでした。ですから、試験が終わった後、自分としての手応えはそれほどなかったですね」
山本先生「ライティングについては、できるだけ小学生が書きやすい内容の作問を心がけております。昨年度は、自分が行った旅行について書いてみましょうというものでした。身近なテーマで出題しますので、作文の対策としては、日頃から自分が経験したことや思っていることを英語で言ってみたり、書いたりすることが効果的だと思います。長い文でなくていいので、継続することが大切ですね」
■桐朋女子「CE入試」の入試要項とポイント
募集人数:約10名
試験内容:準備課題(約30分)
インタビュー(約10分)
入試の狙い
英語4技能(読む・聞く・書く・話す)、英語でのコミュニケーション能力、そして学ぶ意欲や姿勢を評価する。
準備行程&試問
❶「準備課題」は、あるテーマに沿った英語の会話を聞いたり映像を見たりしながら、リーディング、リスニング、ライティングの課題に答える。
❷「インタビュー」は、課題準備室で学んだ内容や、英作文についての確認をすべ
て英語で実施。試問は、受験生一人につき複数の教員が行う。
❸入試に必要な英語力は、英検3級程度。
■CE入試の紹介動画はコチラ

さて、入学されて念願の「アドバンストコース」に入ったお二人ですが、実際の英語の授業は、どのような感じですか?
N.S.さん「発展的な文法を学んだり、難易度の高い長文読解などができるのでとてもおもしろいです。難しい分、先生も噛み砕いて説明してくださいますし。また、私は文法をガッチリやってきたタイプですが、アドバンストコースでなければ出会えない文法もあるので、興味深く学んでいます。発展的な文法でいえば、テキストに『関係形容詞』という言葉が載っていて、初めて知りました。まだちゃんと理解できていないので説明できないのですが(笑)」
山本先生「アドバンストコースのテキストで扱っている文法は、中学生であれば高校生レベルのものを扱うなど、先取りしている部分が多くなっています。インプットの量も多いです」
T.M.さん「それまでネイティブの先生としかやり取りしていなかったので、入学したばかりの頃は、授業で出てくる文法は知らないものだらけでした。みんなは知っているのに、私は基本的な部分が抜けていて。また、知ってはいても日本語とは結びつかないことも多く、中1の時は質問しに頻繁に職員室に通っていました。今はだいぶわかるようになり、プレゼンテーションをする授業などでは、少しずつ活かせるようになってきているなと感じています」

異文化を学びながら、プレゼンスキルを身につける
英語はある意味、実技だと、完全に積み重ね型学習と言われますが、そこについては、どのように思われますか?
N.S.さん「どうなんでしょう。私は日本人の先生を中心に英語を教えていただいてきたので、やはりスピーキングなどコミュニケーションには苦手意識があります。話す場がいろいろあっても、ずっと英語を続けてきたわりには、成果を出すのはなかなか難しいなと実感している部分もあって。そういう意味では、小さい頃から生の英語に触れる環境にあった人を羨ましく思う時もあります。ですから、アドバンストコースには帰国生を中心に週に2回ネイティブの先生に英語のレッスンを受ける『アドバンストプラス』(高2〜)というコースがあるのですが、英検の必要級である準1級を取得すれば参加できるので、私も頑張って高1の冬に取得し、今年度からは週に2回参加しています」
英検準1級を取得するとは、相当勉強なさいましたね。
N.S.さん「大変でした(笑)。でも、今の時期に取れば大学受験にも使えるということも考えました。あと桐朋女子では高2から時間割の選択に幅ができるのですが、その中にDLGS(Dual Language General Studeis/2つの言語で読み書きと学術内容を学ぶ教育プログラム)という授業があります。1時間目は日本語による授業を受けて、2時間目はネイティブの先生による英語での授業を受けるのですが、私にはスピーキングの場がもっと必要だと思ったので、高2になってからはアドバンストプラスとDLGSを取っています。周りには帰国生が多いので私はついていくのに精一杯なのですが、帰国生がいるという環境は大きいと思っています。英語資格については、今後は英検1級ではなく海外でも通用する試験を受けたいですが、まだ具体的には考えていません」
T.M.さん「私は英検を最後に受けたのは小学校6年生の時で、入試に向けて準2級を取ったんですが、そろそろ2級を取らなければと、勉強を始めようと思っています」
■体験の機会が多い環境の中で、いろいろなことにチャレンジできる学校です

お話を伺っていると、お二人とも、もともと「取り組む力」をしっかり持っていらっしゃるような気がします。
N.S.さん「比較的自我が強いほうだと思うので、『自分でやりたい』という部分は強かったと思います。中学受験についても専門の塾には行かずに、自分でやることを考えて勉強して行こうという思いは、小学生の頃からあったのかなと。CE入試に関して言えば、学習してきたことが入試で終わるわけではなく、その後の自分の英語力に繋がっていくものなので、入試対策という思いで勉強に取り組んだことはなかったです」
T.M.さん「私は正反対で、そういう意味では全然自我がないです(笑)。目の前のことを黙々とこなすことは苦手なんですが、やりたいことがあればチャレンジしてみるという、チャレンジ精神はあるのかなとは思っています。例えば、音楽経験はなかったんですが、入学後に『いろんな人と音楽を奏でてみたい』と音楽部音楽班に入り、チェロを始めました。でも今は、もっと自分のチェロの音を綺麗にしてソロでも弾いてみたいと思い、部活はやめて、音楽教室に通って個人レッスンを受けています」
N.S.さん「私は、中1から5年間、放送部で活動しています。文化部に絞った後に、いくつか見てみた中に放送部があったのですが、私は自分のことばでハキハキと物事を伝えられる人になりたいと思っていたので、アナウンス的な『読み』をできたら素敵だなと思ったことと、技術として将来何かしらの役に立ちそうだなと思ったことがきっかけです。小さい頃は内気で、人見知りだったことも関係しているのかもしれません」
T.M.さん「チェロは続けようと思っているんですが、今、ちょっと演劇部が気になっていて、今度のぞいてみようかなと思っています。裏方で音響とかをやってみたいという気持ちもあるので、一度体験してみようかなと思っているところです」
ところで、桐朋女子さんといえば、体育祭での熱量が有名ですが、お二人が思う「桐朋女子の魅力」の代表例を教えてください。
N.S.さん「まさに、体育祭は大きな魅力だと思います。私は学年ごとに行う『応援交歓』の企画にも携わっているのですが、前年の秋から翌年の5月の本番に向けて準備を始めます。私は5年間もこの学校にいるので、それが普通だと思っているのですが、側から見ればやりすぎに見えるかもと思いつつ、体育祭に賭けている生徒は多いです。今年は高3の赤の方々が優勝しましたが、来年は最後の学年になるので、私たち青が勝たないといけません(笑)。また、当日は平日にもかかわらず、すごい数の卒業生の方々が応援にいらっしゃいます。たぶん、有休を取られて(笑)」

T.M.さん「大きなイベントも生徒が主体となって創り上げていくので、そこはものすごく魅力的だと思うんですけど、ほかにも『学年活動日』というものがあります。歌舞伎を観に行ったり、舞台を観に行ったり、山登りに行ったり、学年によってさまざまなんですが、渡された地図を見ながら目的地に向けて、みんなで意見を出し合いながら班別行動をします。そこは普段は知らない仲間の一面を見れたり、知らない知識をみんなで共有できる場です。今年は、私の学年は山登りの予定だったんですが、熊の出没が心配ということでバーベキューに変更になりました。火起こしからしたんですが、どうすればうまく火をつけられるかということを話し合ったりするだけでも盛り上がるので、私はその日をすごく楽しみにしています」
N.S.さん「あと、放送部も桐朋女子の魅力の一つだと思っています。部長を務めさせていただいていますが、学校説明会などでも部員が司会をしたり、コンテストでも毎年成績を残させていただいています。でも、今は人手不足で中高合わせて十数名しかいないので、受験生のみなさん、待っています(笑)」
T.M.さん「私はもともと美術とか音楽など芸術系が好きなんですが、高2からは選択授業として美術や音楽でもたくさん種類があると聞いています。授業を自分で組める桐朋女子では、本当に自分が好きな道を考えて時間割を作り出すことができるので、そこもとても大きな魅力だと思っています」
では、お二人が今考えられている将来の展望を教えていただけますか?
N.S.さん「私は高2なので、大学についてもそろそろ考えなければなりませんが、その先の将来はまだ明確には決めていません。大学は文系で考えています。できれば、英語も活かせるような分野に進みたいのですが、そのためにはまだ英語力が足りないなと自分では思っています。あと、中3の時の公民のレポートで『選択的夫婦別姓』について書いたのですが、政治的なことにも興味があるので、文系の中でも国際系や政治系などを考えています」
T.M.さん「私は芸術系に進みたいと思っているんですが、興味・関心を持っていることがいろいろあって、音響的な部分とか、ミュージカルでも舞台セットや出演している人など、いろいろな面で気になることがたくさんあるので、まだこれをやりたいというのは決まっていないです。でも、自分の好きなことを活かせればと思っています」
それでは最後にお二人からは先輩として、そして先生からも受験生へのアドバイスやメッセージをお願いします。
N.S.さん「CE入試は、帰国生や小さい頃から英語を勉強してきた人だけではなく、いろいろな人に挑戦してほしいなと思います。この入試は自分の英語力を見直す機会にもなると思いますし、一つのゴールを目指して勉強することは、中学生になってから学習するうえでもモチベーションになると思います」
T.M.さん「英語が好き、英語が得意と思っている人はもちろんですが、自分では少し苦手だとか、自信がないと思っている人でもチャレンジしてほしい入試だと思います。チャレンジすることは、その後の自分の自信にも繋ります。英検とはひと味違う試験になっているので、英検でダメだったからとか、私のように今まで文法を習ってこなかったからと諦めるのではなく、チャレンジしてみることが一番大切だと思います」
山本先生「話す・書く・聞く・読むの4技能を身近なテーマに沿って出題しています。話すことが得意な受験生はスピーキングで高い点が取れると思いますし、文法が得意な受験生は書いたり、読んだりする部分で点が取れると思います。『私には無理』と決めつけないで、英語に少しでも興味がある人にはぜひ受けてほしいです。私たちも、受験生の中に一つでも良い点を見つけられれば、という思いで入試に臨んでいます」


八ヶ岳高原寮でテント生活をする「キャンプ実習」はその一つ
生徒と先生、生徒と生徒。対話を通して「自分のことば」を育む中で、
生涯を支える「基軸」を培う学校生活が見える気がしました。
- 取材Memo
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主体性と協働性、そして自己肯定感を育んでいく生徒たち
「A入試(口頭試問・2科筆記試験)」「論理的思考力&発想力入試(記述型試験)」「Creative English入試(英語1科型)」「B入試(2科または4科筆記試験)」と、同校には帰国生入試以外に4種類の入試があります。どれもが、同校が育成する「論理的思考力」「発想力」「表現力」を統合したもの。授業でも日常の学校生活でも対話を繰り返し、その中で生徒が自分で気づきを得て、仲間と協働していく桐朋女子の教育風景が、入試形態の多様性からもうかがい知れます。定期試験もない、通知表もない、高校では進路に合わせて自分で時間割を作成する。稀有な体制ですが、教育哲学である「Learning by Doing」の下、生徒たちはみな主体性と協働性、そして自己肯定感を育んでいくのです。卒業生たちが口々に言っています。「楽しさと忙しさと大変さがいっぱいあったことがよかった。桐朋での生活が今も基準になっているので、在校時はリーダータイプではなくても、社会に出るといつの間にか場を仕切り推進役になっている人が多い」と。今回登場してくれた生徒さんお二人はタイプがまったく違うように見えますが、お二人とも心を込めて自分のことばで真摯に語ってくれる姿は、まさに「ザ・桐朋生」でした。

お二人のお話にも出てきましたが、同校の多彩な学校行事は生徒主体で企画・運営されます。
なかでも、学年対抗で行う体育祭は生徒たちの熱量が最大限に放出される行事。
学年が一体となる名物の「応援交歓」(上の写真)や、3人4脚、2人3脚、2人2脚、1人1脚でたすきを繋ぐ「足の歴史」、曲に合わせて身体表現をする「団体徒手」など工夫を凝らした団体種目も多く、運動が得意でない生徒も意欲的に取り組める構成です。
下級生は上級生に勝つ「下克上」を目指し、上級生もまた下級生に負けまいと、擦り傷を作りながら練習し、綱引きのために体重を増やし筋肉をつける生徒まで!
学年色の6色は6年間継続しますが、社会人になった卒業生も応援に駆けつけると聞き、その絆は世代を超えて固く結ばれているというのも頷けました。
N.S.さんの学年色は「青」、T.M.さんは「紫」。
いつの日か、社会人になったお二人が自分と同じ学年色の後輩たちを応援する姿を、このグラウンドで見ることができるかもしれません。