【日本学園】の《創発学入試》は、子供の「未来」を発見する

適性検査型入試

京王線と井の頭線が交差する「明大前」駅を降りて世田谷らしい街並みを通り抜けると、見上げるほどの大木に抱かれた瀟洒な建物が突然目の前に現れます。130年を越す歴史を持ち、現在の地に校舎が移ってからすでに85年。本館が持つ伝統の重みと施設の余裕あるレイアウトに、まず驚かされます。本館(卒業生・今井兼次氏設計)の玄関を入れば、大階段や高い天井、そして機能的でありながら細部に拘った美しい構造が目に飛び込んできます。こうした歴史の重みを日々感じながら学ぶことができる六年間の学園生活は、学園コンセプトである《創発学》を知ると、さらに意義深いものになります。

型にはめずに個性を伸ばす《創発学》プログラムの目的は、 「社会での活躍に繋げる」こと

《創発学》は、豊かな創造力と発信力を養う、15年以上の実績を誇る日本学園のオリジナルプログラムです。取材当日お話を伺った高3学年主任・谷口哲郎先生は、水野校長と共にプログラムを立ち上げたメンバーでもあり、自校独自の教育システムに懸ける熱い思いが伝わってきました。

入学する子供たちにどんな未来を切り拓いて行って欲しいですか?と質問したところ、「百三十年を越える我が校の歴史の中で一貫している点は、『自分の得意を伸ばす、型にはめない、褒めて育てる』ことで、それは現在も変わりません。その結果として、実社会で活躍して欲しいと思っています。それぞれの子供が持っている個性や得意を活かして、自立して、社会の中で生きて欲しい。日本学園は、お互いが認め合って得意を伸ばす、社会に出る前の『練習の場』でもあると考えています」と答えてくださいました。このことは、日本学園の卒業生リストを見るとよくわかります。横山大観や永井荷風といった誰もが知る大作家を始め、政財界やスポーツから芸能の世界まで多彩な人材を輩出しています。ちなみに、若手人気俳優の斎藤工さんも卒業生です。

日本学園の持つ魅力を伺うと、「一言で申し上げると「自由闊達な校風」ということに尽きるかと思います」という明快な言葉が返ってきました。その「自由闊達な」中高一貫男子校ならではの「利点」や「魅力」、《創発学》プログラムと《創発学入試》のポイントを探ってみたいと思います。

「自分の得意」を見つける学校

日本学園は、一つの明快な指針を持って学校運営を行なっています。

「その子の個性を伸ばして『やる気』に火をつけ、結果としていい大学に入れたり、自立した人生を歩む子供が育つという本校は、ある意味『お得な学校』かもしれません」と谷口先生。

「日本学園は、『自分の得意を見つける学校』です。伸び盛りの六年間の中で、男の子が自分の得意なことに気づいた時、その目の輝き、成長していく姿は目覚ましいものがあります」 そしてこの子供達の成長の基礎となるのが、六年間を通して行われる《創発学》という教育プログラムです。単なる「体験」だけで終わるのではなく、「自身の経験」として実感することで、初めて人は成長するのかもしれません。《創発学》は、フィールドワーク・プレゼンテーション・キャリアエデュケーションという三つのサイクルを通して、子供たちの「経験」を積み重ねていきます。

1.フィールドワーク《創》

事前学習を徹底して行うことが特徴のフィールドワークですが、中学入学直後に「林業体験」が新入生を待ち構えています。夏には「漁業体験」、そして中学二年生での「農業体験」へと続き、第一次産業を一通り体験します。最終回の「農業」では、民泊で農業の現場を体感したり、収穫物の販売段階まで関わったりと、内容も充実していきます。さらに、「あつき恵み教室」という職業講話は、アポイントメントを取ることからスタートし、生徒自身が取材を進めていきます。その中で、将来の夢や理想が現実味を帯びてき、学習意欲にも繋がっています。

2.プレゼンテーション《発》

同じ体験をしても、感じ方は人それぞれです。フィールドワークの結果は、壁新聞や論文など様々な形で発表の機会を与えられます。自らの経験を発信すると同時に、他人の意見に耳を傾けるとことにより、社会生活で最も重要になるコミュニケーション能力も高まります。

3.キャリアエデュケーション《学》

フィールドワークとプレゼンテーションを繰り返す中で自分自身を見つめ直し、自らのキャリアに繋げます。様々な産業を体験したり職業を知る中で、進学とその先も含めた自身の可能性や得意分野が明確になります。多感な十代だからこそ可能になる、《創発学》の集大成とも言えるのが、このキャリアエデュケーションです。

当初中学三年間だけだった《創発学》プログラムを高校まで広げた理由が、「中学で伸びた生徒が高校でイニシアティブを取ることが多く、まず学内でこのプログラムの良さが認識されたこと」と、「せっかくの得意を見つけた能力をさらに伸ばす過程の必要性を感じた」というのも納得できます。三年間で終わるのは確かにもったいないプログラムです。「中学では『得意を見つける』ためのもの。高校では、その得意と『自分の得意と社会との接点』を見つける」ことを目的としています。

日々の積み上げが確実な実績につながる

「Daily Lesson Note」と「にちがく講座」

ところで、この《創発学》が大きな木の「幹」だとすると、「枝」や「葉」の部分はどうなっているのでしょうか?大きな枠組みももちろん重要ですが、学校を選ぶ際に最も気になるのは毎日の学習環境ではないでしょうか?お話を進めていく中で、実はその「枝」でもある日々の積み重ねの中に、六年間で大きく成長できる理由が隠されていました。

日本学園では、この「日々の学びの習慣」を身につけるための「Daily Lesson Notes(以下:デイリーレッスンノート)」と「にちがく講座」が大きな効果を上げています。 デイリーレッスンノートは、担任から出る宿題で、見開き1ページの中で英語と百マス漢字の基礎学習と日々の振り返りを行うものです。先生は毎日個々のノートをチェックし指導を行います。所要時間は約一時間、宿題とは別に毎日続けることで、中学校の三年間ではなんと1,095時間分もの「基礎力」を得られると同時に、先生とのやりとりを通して客観的に自身を見つめ直すきっかけにもなります。

毎日の成果は朝テストや授業内でのテストで確認でき、先生と二人三脚で進めることができるようになっています。デイリーレッスンノートに加え、もう一つの「にちがく講座」も大きな特徴です。全員参加で週二回放課後に、学年別や縦割りでテーマに沿った学習を行います。「課外授業」かと思われるかもしれませんが、にちがく講座は「自習」であることが大きなポイントです。授業ではなく、「自学自習」の環境を学校が準備してくれます。

英検や漢検の試験が近ければその対策、学園祭が近くなると《創発学》で何かを作る時間にといったようにな大まかなテーマは決められているものの、教師はあくまでもアドバイザー。進め方や学習方法の悩み、集中力が途切れてしまった生徒への指導がメインで、あくまでも生徒の自主性を尊重しています。

そして、意欲的に学習に取り組む姿勢が自然に培われていくこの三年間の積み重ねが、高校で大きな結果を出しています。内進生(内部進学生)は、高校では「特進クラス」に進学する割合が多く、そこでリーダーシップを取る生徒が大変多いとのこと。《創発学》と日々の積み上げが目に見える形で効果を生んでいます。

実際に谷口先生が中学から一緒に上がって、現在高校三年生の学年主任をされていらっしゃることでわかる通り、基本は一人は高校まで一緒に「進級」されるとのこと。指導方針がぶれない、そして、少人数ならではの目の届き方も、保護者にとってはとても心強いものがあります。今回のコロナ禍でも、日本学園の「良さ」が発揮されたとのこと。日本全国の教育現場は混乱を極めた中、日本学園ではかなり早い段階で授業のシステムが整いました。先生に「なぜ、そんなに早く実現できたのでしょうか?」とお尋ねしたところ

≫既に教員全員へタブレットを配布済みでリテラシーがある程度まで達していた。また生徒も一人一台のタブレットを所有しており環境は整備されていた

≫5月の段階で全教諭が授業をYouTubeにアップ。学校教育アプリ「Classi」等でサーバーダウンなどが頻繁に起こっていたことを考えると、これは画期的だったと思う(当初は日本学園もClassiで配信予定だった)

≫学校独自でサイトを立ち上げ、YouTubeの動画を活用して、授業を継続

≫宿題やプリントなども送付したり、二ヶ月で授業体制の大枠を整備

≫先生と生徒の距離が近く、教員が困っていると生徒が助けてくれたことも

などを挙げてくださいました。 現在は短縮授業ではあるものの、とにかく「学びを止めない」ことを第一に、部活もある程度は再開されているとのことでした。このような不測の事態が起こった際の対応能力というのも、学校への信頼に繋がります。

《創発学入試》は、頭の柔らかさが求められる試験

日本学園では、適性検査(I・II)をすでに実施しており、そこに3年前の《創発学入試》が加わりました。試験の違いをお尋ねしたところ、「狙いはどちらも同じですが、より好奇心のある子、探究心のある子を見極めたい」と谷口先生。ざっくりと試験のタイプを分類すると以下のようなイメージになります。

入試タイプ評価ポイント求められるもの
創発学入試頭の柔らかさや気づきある「事例」を「自分の体験」として具体的に考え、表現する能力
適性検査I国語的能力文章を読んできちんと理解したり、体験を経験化(自身の言葉で説明する)する能力
適性検査II空間(文字ではない映像や流れ)把握能力プログラミングなどに求められる、全体の流れや手順を把握してそれをまとめて図式化する能力

同じ作文でも、単純に原因から導き出される一つの「結果」を記述することではなく、自分の想像力を働かせた「広がり」のある内容が要求されます。例えばある年の《創発学入試》では「目の不自由な方は、どのように空間を把握しているのか?」という文章が出題されました。自身の体験ではない内容を読んで想像し思考を巡らせて分析し、そこから考えを導き出すことが求められています。《創発学》で求められる「体験を単に「やった」だけで終わらせず、自分の『経験』に繋げる能力」を発見することが《創発学入試》の大きな目的なのかもしれません。

「柔軟な発想をする子が《創発学入試》で入って来ています。その子たちの個性を潰さず、伸ばして育てていくことが一番大切です。」ただ、「個性」重視の指導というのは現実的には難しいのも事実です。その点をどのように解決されているのでしょうか?とお聞きしたところ、

「2科目入試などを経た子供たちは、基礎学力のある状態で入ってきます。もしかしたら《創発学入試》で来た子はそれができていないかもしれない。でも、うちは、それで大丈夫なのです。四字熟語をたくさん知っているのがベストかといえばそれは違います。《創発学入試》では、“そうじゃない”子供を採りたいのです。まだ《創発学入試》は知名度が低いので適性検査入試も残していますが、最終的にはこちらをメインに持っていきたい」とのことでした。

「自分の得意を伸ばしたい子」こそ、《創発学入試》で是非来て欲しい」とおっしゃる先生の言葉には、入学後にその個性を伸ばすことができる《創発学》プログラムに対する揺るぎない自信を感じられました。

最後に、来年受験する受験生と保護者の方へのメッセージをお聞きしたところ、

「本校は『伸び』がある学校です。もし学園見学のチャンスがあれば、是非『壁新聞』を見てください。学習したことを発表する際、あえてパワーポイントなどは使わず、まず手書きの『壁新聞』という形式に拘ってスタートします。この生徒の力作をご覧になれば《創発学》が目指すものがご理解いただけるのではないでしょうか」という言葉をいただきました。

ところで、学園の公式サイトとは別に、YouTubeに【日本学園公式チャンネル】「にちがくムービー」があります。これはなんと、日本学園の先生方が作っていらっしゃるとのこと。 「今もどんどん製作中ですよ!」と楽しそうにおっしゃる谷口先生。一番人気のムービーは、お二人の先生が制作した「学校案内のムービー」だそうです。コロナで学校見学ができない今、授業や部活動の様子など、内部の目からみた「日本学園」の素顔が垣間見えます。こちらも是非一度ご覧ください。

取材Memo

お話を伺う中、生徒と先生との間がとても「近い」ことを何度も感じました。取材に伺って校門を入った時、森の中のような敷地内のあちこちで、写生板を抱えた子供たちが熱心に絵を描いていました。見回って指導している先生との会話がふと聞こえたのですが、先生と楽しそうに話していて、とても羨ましく思いました。多様性が求められ変化が大きい現代の中、柔軟に生徒と向き合い、ぶれずに未来を見据えて教育を行なっている日本学園の姿勢と自信を強く感じた取材でした。